一言に「中国」といっても、広大な中国本土では、内陸部と沿岸部で生活レベルが全く異なる。そのため中国では都市のレベルを区分する言葉(1〜5線)があり、その分け方も細かく、そして明確な基準があるのだ。これらの都市は頻出用語となっているので、各都市レベルのイメージや注目市場と共に紹介したい。
そもそも誰がランクを決めている?
都市レベルは一般に「1線都市(または1級都市)」といった呼び方をし、1〜5線都市まで区分される。日本では人口に応じた政令指定都市などがあるが、中国の場合は主に、「第一財経」というメディアが毎年発表する「都市商業魅力ランキング」が参照される。
これは人口の多さだけでなく、都市の生活レベルや商業資源、将来性などいくつかの項目から算出され、毎年ランクが上下する。その中でも1線都市に当たる北京、上海、深圳、成都は不動の存在だ。
1〜2線都市とは?
都市レベルは5線都市まであるが、新1線都市(1.5線都市ともいう)という中階級があるため、6段階で分けられている。1線都市は先ほど紹介した大都市で、不動のトップ4だ。それに近からず遠からずなのが武漢や成都、重慶、西安など13の新1線都市で、この新1線都市には今年2都市が仲間入りし、15都市になった。
1〜新1線都市は主に沿岸部に位置し、写真のように街自体も大きく発展している。中国の中でも商業が盛んで、国際的であり、テクノロジーが発達した「進化した中国」のイメージに近い。ホワイトカラーの労働者が多く、百貨店には海外化粧品ブランドが入り、ファッションへの出資も盛んだ。
2線都市は寧波、廈門、大連、青島など30都市で、日本ではあまり知られていない都市名も増える。新1線までと比べると影響力の低い都市だが、地域ではトップの“地方都市”のイメージだ。
3線都市以下「下没市場」とは?
3線都市以下は主に内陸部に位置し、農村や田舎のイメージで、日本では馴染みのない名前が多い。3線以下の都市はまとめて「下沈市場(シャアチェンシーチャン)」と呼ばれるが、この下沈市場は近年の注目市場とされている。
3線都市には新疆ウイグル自治区の首府・烏魯木斉(ウルムチ)などが含まれ、レトロな地方都市のイメージだ。4〜5線都市までいくと、行政の中央には街がありつつも田園や山、川といった豊かな自然が広がり、1線都市とは別世界である。
なぜ中国の“田舎”が注目されているのか
なぜ今、中国の“田舎”に当たる3線以下の都市が注目されるかといえば、その人口の多さと可処分所得の拡大が大きな理由だ。国泰君安証券の調査報告によると、3線以下の人口は約10億人で、アメリカの総人口の3倍以上にもなる。また中国全体のおよそ3分の2を占める6億以上のインターネット利用者がおり、オンライン消費が盛んだ。
さらに3線都市以下の家賃は1線都市の10分の1、あるいはそれ以下であるのに対し、収入は少しずつ上昇してきている。中国の調査会社、アイリサーチコンサルティング(iResearch、艾瑞咨詢)によると、4〜5線都市の消費者の個々の支出額は1〜2線都市の消費者に比べて高くないものの、消費財の総売上高は徐々に近づいてきているという。
収入増の要因の一つに副業の種類が増えたことがあり、ライブ配信や配車、配達サービスが広まっている。最近では農家も淘宝ライブ(TAOBAO LIVE)などを活用し、ライブコマースで農産物を販売している。アリババによると淘宝ライブを利用した湖北省農村部の茶農家は、1カ月の売り上げがライブのみで29万元(約435万円)に達したという。
また3線都市以下では美容の需要も急増しており、ロレアル中国は昨年2月のコミュニケーションミーティングで、下沈都市の若者の存在を今後のトレンドとし、2018年の「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」の中国売り上げの48%は店舗のない都市、つまり田舎の消費者によるものだったと発表している。
共同購入EC(多人数で購入することで製品をお得な価格で購入できるEC)や短時間動画なども、今後の伸び代が大きくユーザーの多い3線都市以下に目をつけており、多くのプロモーションが行われている。3線都市以下の成長には今後も注目が集まりそうだ。