繊維商社の豊島の2020年6月期決算の売上高は前期比5.4%減の2007億円、営業利益は同98.3%増の61億円、経常利益は同76.1%増の76億円だった。4期ぶりの減収ながら、3期ぶりの増益で過去最高益を上げた。
部門別では、売り上げ構成比率61%を占める繊維製品が新型コロナ下における医療関連商材の需要があり同4%増の1225億円だったが、繊維原料が同22%減の435億円と落ち込み、特に綿花は需要の減速による取り扱い減と米中貿易摩擦による相場の下落により大幅減収となった。綿花事業の損失処理のため、当期純損失7億円を計上した。
豊島半七・豊島社長は前期を振り返り、「上期は順調に推移し、かつてない業績を期待したが、新型コロナの影響と海外の子会社の損失が響いた。綿花の相場を読み違え、挽回しようとしてさらに深みにはまった。それでも過去最高益を達成できたことは、社員の営業努力をほめたい」と話した。
今期は厳しい見通しを立てており、綿花の事業規模を大きく縮小する予定で、21年6月期の売上高は1700億円、経常利益は40億円を予想している。
「当社はもはや繊維商社ではなく、“ライフスタイル商社”を自負している。今後はモノだけでなく、サービスを売っていく。これから世界が変貌する中で、頼りにされる業界のビジネスパートナーとなるために、当社が力を入れているサステナビリティについては独自の素材開発だけでなく、その仕組み作りが重要だ。失敗を糧としながら、次の展開を考えたい」と話した。
独資のコーポレートベンチャーキャピタルを活用した出資は17件を数え、異業種との業務提携により、OEM(相手先ブランドの生産)、ODM(相手先ブランドの設計・生産)事業の精度を高めている。4月はクモの糸の遺伝子から繊維素材を作ることに成功したスタートアップ企業スパイバーに約5億円を出資しており、バイオ繊維の事業領域を構築して地球温暖化や海洋汚染の課題解決に貢献したいとしている。