アマゾン(AMAZON)は、ラグジュアリーブランドを取り扱うアプリ「ラグジュアリーストア(Luxury Stores)」を9月15日(現地時間)に公開した。
現在は招待制となっており、米国のプライム会員の中でアマゾンから招待メールを受け取った人のみが利用できる仕組みだが、将来的には対象を拡大するという。また米プライム会員で招待されていない人も、アマゾンのサイトからリクエストできるようになっている。
注目の参加ブランドだが、第1弾は「オスカー デ ラ レンタ(OSCAR DE LA RENTA)」だ。2020年プレ・フォール・コレクションと、現在は同ブランドのブティックおよび公式サイトでのみ販売されている20-21年秋冬コレクションから、ウィメンズウエア、ハンドバッグ、ジュエリー、アクセサリーのほか、新作の香水などを取りそろえた。また子ども服も近日中に取り扱う予定となっている。ほかの参加ブランドについては、今週中に少なくともあと一つが公開されるという。
「ラグジュアリーストア」は参加ブランドの自由度が高く、ストア内のデザインはもちろん、商品ラインアップ、販売数量や価格、セールのタイミングなどもブランド側が独自に決定できる。それに加えて、アマゾンのカスタマーサービスや配送サービスを利用できる。またアプリには、商品を着用したさまざまな体形や肌の色をしたモデルをユーザーが360度動かすことができる機能が搭載されており、より正確なフィット感が分かるようになっている。
クリスティン・ボーシャン(Christine Beauchamp)=アマゾン ファッション(AMAZON FASHION)プレジデントは、「当社は常に顧客の声に耳を傾けており、『ラグジュアリーストア』にこのブランドがあったらいいのにというプライム会員からのフィードバックに大いにインスピレーションを受けている。今後も進化を続け、世界中のデザイナーと、既存および新たなラグジュアリーカスタマーとの橋渡しをしていきたい」と語った。
アレックス・ボレン(Alex Bolen)=オスカー デ ラ レンタ最高経営責任者は、「アマゾンの顧客を重視する姿勢に敬意を抱いている。『ラグジュアリーストア』を通じて、より多くの顧客に当ブランドのストーリーや製品の魅力を伝えられることを楽しみにしている」と述べた。
「ラグジュアリーストア」のスタートを記念して、アマゾンと「オスカー デ ラ レンタ」はカーラ・デルヴィーニュ(Cara Delevingne)を起用したムービーを公開。監督は「コーチ(COACH)」のキャンペーン映像なども撮影したバニー・キニー(Bunny Kinney)で、スタイリングはジェイソン・ボールデン(Jason Bolden)が手掛けている。
新型コロナウイルスの影響で米国では百貨店やアパレルブランドの経営破綻が続いているが、そうした中でもECは全般に売り上げを伸ばしていることを考えると、「ラグジュアリーストア」は中小規模のブランドにとって好機だといえるだろう。
アマゾンにとっても、アパレル分野の強化は長年の懸案事項だ。下着などの消耗品やベーシックな商品であればアマゾンで購入する消費者も多いため一定の売り上げを獲得しているが、よりファッション性の高いアパレルでは試行錯誤を繰り返している。今回、満を持して本格的にラグジュアリー市場に参入した。
米投資銀行バーンスタイン(BERNSTEIN)のルカ・ソルカ(Luca Solca)=アナリストは、「招待制にしたことで、ラグジュアリーな“特別感”を演出したのは賢いと思う。このサービスの成功は人気ブランドをそろえられるかどうかにかかっているが、スタート時に『オスカー デ ラ レンタ』だけでは弱い。アマゾンは今後、より多くの人気ブランドと提携する必要がある」と分析した。
なお20年1月の時点で、アマゾンはLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)の傘下ブランドにも出店を打診したが、すげなく断られたという臆測が広まっていた。これに対し、ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼CEOはアナリスト向けの決算説明会で、「そうした大手プラットフォームから何度か打診を受けたが、そのたびに断っている」と話している。