アダストリアは2020-21年秋冬から、60代女性向けの新ブランド「ウタオ(UTAO)」をスタートする。9月16日から「スタディオクリップ(STUDIO CLIP)」の全国18店舗および同社のEC「ドットエスティ(.ST)」で先行販売を開始した。
ターゲットは、1970年代の「ニュートラ」「ハマトラ」といったファッションの流行を経験し、高い感度を持つこれから60代を迎える女性。“ナチュラルコンサバな大人服”をキーワードに、一般的な百貨店ブランドによりも値ごろでかしこまりすぎない雰囲気ながら、洗練され、幅広いシーンに対応するデイリーウエアを提案する。
商品企画にあたっては社内座談会に加え、60代をターゲットにしたファッション雑誌「素敵なあの人」(宝島社)と協業して読者のニーズを吸い上げ、カラーや機能、価格に反映した。価格帯はカットソーが3500円〜、シャツ・ブラウスが5600円〜、パンツ・スカートが5900円〜、アウターが9800円〜。お尻回りをカバーするよう後ろ身頃を長く設計したブロードシャツ、エレガントなロング丈ながら深いスリットで足さばきをよくしたワンピース、ハギをなくしてストンとした落ち感にこだわったパンツなどをそろえた。
メディア戦略については「素敵なあの人」を軸に、ユーチューブ番組での販促施策を検討する。「60代女性はもともとテレビショッピングなど通販には慣れ親しんでいる世代。動画を活用したアプローチでもブランドへの信頼を獲得していきたい」とブランド事業を統括する新井隆広アダストリア営業第3本部長。
これまでアダストリアは「マルチブランド戦略」を掲げ、SCを中心に主に20〜30代向けブランドを主力とするポートフォリオを築いてきた。「これまでは若いお客さまに向けて『カジュアル』『きれいめ』などファッションのジャンルで水平方向にカバーしてきた。だが、すでに女性の約半数が50代以上という時代になった(2020年、厚生労働省調べ)。今後はお客さま一人一人と長く寄り添えるようなブランド開発も重要になる」(新井本部長)。
そのような考えの下、同社は「ウタオ」の他にも50代向けのSCブランド「エルーラ(ELURA)」を2019-20年秋冬にスタート。「グローバルワーク」とECでのテスト導入を経てMD修正を重ね、好調を受けて20年9月現在で7店舗を出店している。「ウタオ」でも同様に、まずは「スタディオクリップ」18店舗でのポップアップストアとECを試金石にする。「50〜60代などのアッパー層はわれわれにとって未知の世界。試行錯誤しながらじっくりとブランドを育てていきたい」。