ファッションという「今」にのみフォーカスする産業を歴史の文脈で捉え直す新連載。17回目は多様化する性の在り方を考察する。編集協力:片山マテウス、この記事はWWDジャパン2020年9月14日・21日号からの抜粋です)
最近事務所でヘビーローテーションしている音楽に、アルカの7月31日にリリースされた新作アルバム「キック・ワン」がある。「彼女」はベネズエラ出身ロンドン在住のミュージシャン。2014年にデビューし、早くからカニエ・ウェストやビョークらにその才能を絶賛され、FKAツイッグスなど新世代アーティストからも絶大な支持を集めている。今作では御大ビョークも参加し、見事な美声を披露した。なぜカッコ付きで「彼女」と記したかというと、アルカはノンバイナリーのトランスジェンダーだからだ。ノンバイナリーとは、性自認が男性・女性の典型的な二分法(バイナリー)に当てはまらない人々のこと。アルカの場合は本人が代名詞として「彼女/SHE」を選択しているという。米国の権威ある辞書「メリアム・ウェブスター」が19年の「今年の言葉」に単数形の「THEY」(ノンバイナリーへの配慮として用いられる性別を問わない代名詞)を選出したこともニュースになった。「彼」でも「彼女」でもない性が辞書で新たに定義されたのだ。
そして、アルカは、今作で注目の新人アーティスト、ソフィーと共演している。「彼女」はスコットランド出身のトランスジェンダー・アーティスト。「ルイ・ヴィトン」20 年春夏コレクションの巨大なショー会場に投影された、性別を超越した「彼女」が歌う姿は、大きな話題を集めた。
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