デザイナー高田賢三がディレクターを務める増永眼鏡の「マスナガ デザインド バイ ケンゾータカダ(MASUNAGA DESIGNED BY KENZO TAKADA)」はスタートして今年で7年目を迎え、同社を象徴するコレクションとして確立している。高田は増永眼鏡のチームとのミーティングを繰り返しながら、アイウエアデザインに意欲的に取り組んできたが今月死去。生前に完成した今秋の新作は、彼がオマージュを捧げた日本の伝統工芸の要素を今まで以上に色濃く落とし込んでいる。
日本的デザインと
高い技術力を海外も評価
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発表した2型のうち花の名前から付けた“ボタン(BOTAN)”モデルは、べっ甲のかんざしから着想を得たオーバーサイズのラウンド型サングラス。フロントに高田家の家紋である桔梗の模様を切り抜いたメタルパーツを付け、テンプルのデザインは19世紀に流行した手持ち眼鏡“ローネット”の装飾性をモチーフとしたアラベスク模様を施した。高田らしい和と洋の融合だ。
もう1つの“セドナ(SEDNA)”モデルは、厚さ3mmのチタンのシートメタルに、風防のためにデザインした厚さ10mmのプラスチックのパーツをインナーリムに組み込んだ立体的なフォームだ。ブリッジの上部にアラベスク模様の別パーツを付け、装飾性だけでなく強度にもこだわっている。テンプルとテンプルエンドのメタルパーツにも繊細な彫金を施して重厚感を出した。
日本の眼鏡産業の祖として100年以上の歴史を持つ福井県の増永眼鏡の強みは、熟練の眼鏡職人による高い技術力だ。伝統の手仕事から生まれた機能性と、東洋と西洋を融合した高田ならではの美意識が絶妙にマッチした商品力は海外でも評価が高い。「マスナガ デザインド バイ ケンゾータカダ」は、2014年のデビュー作がシルモの“シルモ・ドール”賞を受賞して一気に注目を集めた。生前の高田が今回のモデルで表現したジャポニスムは注目を集めそうだ。
歴史の重みを感じる
「マスナガ」のオリジナルブランド
増永眼鏡のオリジナルブランドはどれも歴史の重みを感じるストーリー性を持つ。その強みは伝統の技術力に裏打ちされた快適な掛け心地と、流行に左右されないタイムレスなデザイン性だ。2020年秋の最新作もクオリティーを高めたバリエーションが充実している。増永眼鏡の創業年を冠した「マスナガ シンス 1905 (MASUNAGA since 1905)」の最新作のポイントは、高い技術力から生まれた造形美。“ベイブリッジ”モデルは、0.6mmのベータチタンをベースに構築した立体的なブリッジとリムの二重構造がアクセントだ。
「G.M.S.」シリーズのルーツは、1933年、昭和天皇が福井県を訪問した記念に献上された増永眼鏡の3本のラウンドフレーム。最新作は細いチタンとアセテート生地を組み合わせて、シンプルな上品さをデザインした。
「光輝」シリーズは、1970年に開催された大阪万博の松下館の企画で使用された“カスタム72”の後継モデルとして誕生。フルアセテートの新型は、“コントラスト”をテーマにマスキュリンとフェミニン、クラシックとエレガンスを表現した。
増永眼鏡は早期からグローバル化に着手し、ミラノのミド(MIDO)、パリのシルモ(SILMO)、ニューヨークのビジョンエキスポ(VISION EXPO)など海外の主要眼鏡展に出展するなどして販売網は30カ国に広がった。海外の売り上げが国内を上回っており、メード・イン・ジャパンの強みを世界で発揮している。
増永眼鏡
03-3403-1918