花王は29日、2021年1月1日付けで、長谷部佳宏・代表取締役専務執行役員が新社長に就任すると発表した。澤田道隆・社長執行役員は、代表権のない取締役会長に就く。8年ぶりの交代となる。
長谷部氏は1990年に花王に入社し、2003年に化学品研究所所長、08年にハウスホールド研究所室長、11年にビューティケア研究センター ヘアビューティ研究所長などを経て14年に執行役員。現在は研究開発部門統括(15年から)、先端技術戦略室統括(18年から)、コンプライアンス担当(19年から)、代表取締役専務執行役員(19年から)に就いている。
長谷部氏の新社長就任理由は、「構想力があり、それに基づくリーダーシップを発揮している点。また、今後の花王グループの成長には技術革新をベースとしたイノベーションと先端技術の導入が大事でありそれに秀でている点、トップマネジメントの視点と企業理念に基づく発言や対応があり安定感がある点」(門永宗之助・社外取締役 取締役会議長 取締役・監査役選任審査委員会議長)などが挙げられた。
長谷部氏は、「新型コロナウイルスの影響は社会のあり方を変えている。また地球環境問題は深刻である。こんな中でも、消費者は花王に期待して消費していただいている。しかしそれは、多くの物質を使い多くの廃棄物を出している会社でもあるということ。これからは“消費しにくい会社”へと舵取りをしなければいけず、これまでの“数と量”から“質と絆”への会社に切り替えていく。そうすることで社会問題にも切り込める会社になれる」と語った。
澤田氏は1981年に花王石鹸(現・花王)に入社し、99年に素材開発研究所所長、2003年にサニタリー研究所長に就き、08年に取締役執行役員を経て12年から現職。澤田氏は、「社長に就任した際、生理用品やおむつなどの紙製品、次いで化粧品を伸ばしたいと思った。化粧品に関しては、ここ3年間はカネボウ化粧品の村上由泰社長とともに大改革の戦略(グローバルポートフォリオの策定)を行なったこともあり、この2つは事業という意味で方向性を出せた。そして9期8年6カ月やってきた中で成果が出たこと出なかったことはあるが、次の花王グループの成長を支えるには新事業の創造が大事である。それを自身の任期の間に事業として見える形にできなかった。それを具現化できる人にバトンタッチしたいと思っていた。長谷部新社長は必ず達成してくれると思っている」と述べた。新事業とは、“人の命を守る事業領域”を検討しているという。