ファッション

リカルド・ティッシがファッションの道に進んだきっかけ

「ジバンシィ バイ リカルド ティッシ(GIVENCHY BY RICCARDO TISCI)」の感動的な2016年春夏コレクションをニューヨーク・ファッション・ウイークで披露したリカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)は、意気揚々と次のターゲット地ミラノに降り立った。9月25日に開催された盛大なパーティーは、同ブランドのサンタンドレア大通り新旗艦店のお披露目であり、「ジバンシィ」のアーティスティック・ディレクター就任10周年を迎えたティッシの凱旋祝いでもあった。

 「あのパーティーで僕は“若さ”に祝杯を挙げたかったんだ。なぜなら僕は若いときにイタリアを離れてしまったから」と41歳のティッシは言う。それほど知名度が高くなかった彼が、「ジバンシィ」のアーティスティック・ディレクターに抜擢されたのは2005年、31歳のときだった。

 ティッシは幼くして“大人”になることを求められて成長した。父親は彼が6歳の時に亡くなり、母親は8人の娘と末っ子の彼を抱えていて、決して暮らしは楽ではなかった。彼はいかにも女性だらけの家庭らしく、メイクがどうの、服がどうのという姉たちのおしゃべりの中で育った。ヘアサロンで働いていた姉が持ち帰るファッション誌は彼を夢中にさせた。彼は「アズディン アライア(AZZEDINE ALAIA)」や「ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)」などのルックを切り取ってはスクラップブックに張り付けた。「僕だけのバイブルみたいなものだった」と振り返る。

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 当時はイタリアン・ファッションの全盛期だった。ジャンニ・ヴェルサーチ(Gianni Versace)、ジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)、ヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)、さらにはナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)をはじめとしたきらめくスーパーモデルたち。貧しい彼には手の届かない世界だった。「学校の先生は、イタリアでビジネスを学んだり、弁護士になろうと思うなら、奨学金をとるしかないと言った。だから僕はアートスクールに入った。それが僕のブレイクスルーになったんだ」。

 ティッシは12歳から、デリバリーボーイや大工として働き始め、海外のアートスクールに行くための資金をためた。時には奮発して憧れのブランドの商品を買ったりもした。初めて「ヘルムート ラング(HELMUT LANG)」のジーンズを買ったのもこの時期だ。

 16歳でアートスクールを卒業すると、すぐにイタリアのテキスタイル工場でデザイナーの職を得た。この時点で彼の運命は定まったともいえる。その1年後には、セント・マーチン美術大学に入学し、英国の奨学金を得て無事卒業することができた。

 彼が世界的名声を得たのは、パリを拠点とする「ジバンシィ」においてだが、「イタリアは忘れがたい思い出に満ちている」とティッシは語る。

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