ファッション

「アレキサンダー・マックイーン」2016年春夏ロンドン・メンズ・コレクション

REPORT

海で働く男のタトゥー入りサヴィル・ロー

「アレキサンダー・マックイーン」の2016年春夏ロンドン・メンズ・コレクションは、「The Sea」。ズバリ「海」がテーマだ。陸地とは全く異なる環境で働く男たちには、新たに探求する価値があると考え、船乗りのスタイルをサヴィル・ローの洋服に落とし込んだ。

フロックコートやダブルブレストのジャケット、クロップド丈のパンツに刺しゅうしたりプリントしたりのイカリやマーメイドなどのモチーフは、船乗りたちのタトゥーを模したものだ。今シーズンは、このタトゥーモチーフが重要な要素で、例えばハイカラーのシャツの襟やカフス、Tシャツの胸元など、モチーフは実際、人がタトゥーを入れそうな箇所に加えるなど、その場所にもこだわっている。プリーツ入りのリラックスパンツを筆頭に、ボタンが縦にならんだビッグラペルのピーコート、ジャケットの上に羽織ったブルゾンなど、あらゆるアイテムがクロップド丈なのは、タトゥーを入れた人は必ず、それを露出するため短いアイテムを着るようになるから。セオリー通りならロングシルエットになるハズのパジャマシャツでさえ、かなり短い丈での提案だ。

タトゥーモチーフ以外でコレクションを彩ったのは、クレイジーパターンのマリンボーダーや、大航海時代の航海図を思わせるような地図のモチーフ。前者は圧倒的な存在感を放ち、後者には荒波やとぐろを巻くウツボなどがのせられ、かつての「マックイーン」らしい危機迫るムードの一片を感じさせる。稀代の才能を持ちながら、社会、特にファッションビジネスとの折り合いをつけることができず悩み続けてきたアレキサンダー・マックイーンが生み出したブランドだ。ファッション業界は、こうした、ギリギリの葛藤の末に生まれたような迫力ある商品の充実を望んでいる気がする。

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