29日にパリで行われた「ディオール(DIOR)」の2021年春夏コレクションのショーで、“私たちはみなファッション・ビクティム(We Are All Fashion Victims)”と書かれた黄色いバナーを持った抗議者がランウエイを歩いた。バナーのすみには、19年のロンドン・ファッション・ウイークで一連のデモを行った気候変動問題にアクションを訴える団体であるイクスティンクション・リベリオン(Extinction Rebellion)を含め、環境問題への抗議に使われる絶滅のシンボルが描かれていた。
「ディオール」のマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)=アーティスティック・ディレクターは普段からランウエイで社会的メッセージを発することも多く、抗議者の登場が計画的だったのかどうか、会場には困惑が広がった。「ディオール」の親会社であるLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON 以下、LVMH)のアントワン・アルノー(Antoine Arnault)=ヘッド・オブ・コミュニケーション&イメージは「判別が難しいが、ショーの一部だったと思う」と述べたが、後に事実と異なるとの知らせを受けて撤回した。その後この件についてコメントをしていない。ピエトロ・ベッカーリ(Pietro Beccari)=クリスチャン・ディオール クチュール(CHRISTIAN DIOR COUTURE)会長兼CEOもまた、「全員にとって驚きだった。うまくやったので、何なのかよく分からなかった」と皮肉った。
抗議者の近くに座っていたシドニー・トレダノ(Sidney Toledano)LVMHファッショングループ(LVMH FASHION GROUP)会長兼CEOは、「何が起こっているか全く分からなかった。彼女が私のそばを通るのを見たが、ショーで歩いているようにも見えた。攻撃的ではなかったが彼女のメッセージは明確ではなく、ショーの一部であったかどうか誰も分からなかっただろう」と語った。「われわれが地球を壊しているとは思っていない。二酸化炭素の排出量の削減や原材料の調達管理などにより、環境への影響を減らすことに取り組んでいる。私たちをターゲットにするべきではない。もっと汚染に影響を持つ産業があると思う」。
LVMHはサステナビリティへの取り組み強化の一環で、1月にエレーヌ・ヴァラド(Helene Valade)を環境開発ディレクターに任命している。新たな役職を通して21年に発表予定の、グループの今後10年間の環境問題に対する目標である「ライフ2030(Life2030)」を定める役割を担う。