※この記事は2020年8月4日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
あぁジョン・ガリアーノ、全部見せてくれてありがとう
17日にデジタルで発表された「メゾン マルジェラ」の2020-21年秋冬“アーティザナル コーエド コレクション”のことです。52分という長時間でしたが、その間椅子の上で膝を抱えてほぼ動かずというか、引き込まれて動くことができず、半分息を止めて見ました。これまで何度も「メゾン マルジェラ」のショーを見てきましたが、今回が一番感動したと言っても過言ではありません。
前提としてジョン・ガリアーノが私のアイドルであるという理由があります。また「メゾン マルジェラ」が匿名性を特徴とするブランドであるにもかかわらず今回は制作過程をつまびらかにするというある意味究極の“奥の手”を使ったというのもあります。52分の間、BGMはほぼジョンの声。何にインスピレーションを受けて、何を作りたいのか、スタッフに情熱的に説明し打ち合わせをする様子が詳細に公開されました。
ジョンがインスピレーション源であるダンスの映像を見て楽しそうに笑う表情、イントネーション、人との接し方、たばこの持ち方、きれいなおでこなどなど細部が気になります。なぜならアイドルだから(笑)。そしてコレクションの美しさは、彼自身の美意識からくると思うからです。
私はファッションショーの取材がとても好きです。それは、何か新しいモノ、価値観が生まれるその瞬間に立ち会うことが好きだから。ファッションショーはデザイナーを中心にクリエイターのセッションで出来上がってゆく即興音楽のようなもの。それ故ショーの本番以上に緊張感漂うバックステージの取材が好きです。この映像はその“瞬間”が連続して52分続くような興奮がありました。
一着の服が生まれるまでにはこれだけの知識があり、ソースがあり、アイデアがあり、技術がある。デザイナーズブランドが私たちの、少なくとも私の人生には必要だと改めて思いました。全部見せちゃったことで匿名性が薄れて価値が下がった?いえいえ、そんなことはありません。さらけ出してそのエネルギーを放出した姿を見て、次への期待感が高まりました。ありがとうジョン!
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