専門店チェーン、セレクトショップの2020年9月度売上高(既存店ベース)は、ニューノーマルに対応できた企業と苦戦が続く企業がいよいよ固定化されてきた印象だ。好調企業の代表例はユニクロ。店舗とECの合計売上高は前年同月比10.0%増で、同29.8%増と驚異的に伸ばした8月に続いて2ケタ増だった。一方で、ユナイテッドアローズ(UA)は前年に消費増税前の駆け込み需要で売り上げを伸ばしていたことなど複数の要因から、小売りとECの合計売上高が同34.1%減。都心店で通勤ニーズを軸にしてきたブランドや業態は、回復に時間がかかりそうだ。
ユニクロは19年9月が同4.2%減と落としていたことで数字が伸びた分もあるが、「生活必需品、まさに“LifeWear”としてニーズを捉えている」(広報担当者)。コットンや“エアリズム”素材のオーバーサイズTシャツなど、自宅でも外出着としても着られる夏物が、4~5月に休業していた分の在庫もあり売り上げをけん引した。月後半に気温が下がってからは、ニットや羽織りなどが売れているという。
しまむらの主力業態「ファッションセンターしまむら」の売上高(8月21日~9月20日)も同11.1%増と2ケタの伸び。6月の休業明け以来の好調に8月は同4.5%減とブレーキがかかっていたが、再び回復。郊外の独立店が多いため、4~5月も多くの店舗で営業を継続しており「初めてのお客さま、久々のお客さまに来店いただき、6月以降もリピートいただいた」と、9月28日に開催された3~8月期決算会見でも鈴木誠社長は話していた。
「無印良品」の直営店、ECの合計売上高は同1.1%減。19年9月は、消費増税前の駆け込みで高額家具などが売れ、同21.9%と伸ばしていたため、「前提の水準が高かった中で健闘した」と広報担当者。引き続き、メディアやSNS露出の多い食品が同90.5%増という約2倍の伸び。衣服・雑貨は同15.5%減だった。「値下げした靴下やパジャマ、肌着が売れて底支えした」が、残暑で秋物が伸び悩んだ。
アダストリアは同11.5%減。営業再開した6月に同0.1%減まで盛り返したものの、7月は同19.9%減。そこからじわじわと回復基調にあるものの、2ケタ減が続く。ただし、「回復の手応えはあり、投入量が不足しているというわけでもない。残暑という天候要因による部分が大きい」(広報担当者)。
34.1%減と大きく落としたUAは、19年9月が同9.1%増と好調だった反動もある。昨年は消費増税前の駆け込みで売り上げを伸ばしていた。また、昨年は9月12日から自社ECを休業していたことで、自社ECの数字が既存店売上高に反映されていないことなども影響している。「(昨年好調だった分の)反動はあると見ていたが、想定を下回っている。大都市圏店舗の回復の遅れやビジネスニーズの変化は続いており、完全回復にはもう少し時間がかかる」(広報担当者)と見込む。