ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS、以下UA)のオウンドメディア「ヒトとモノとウツワ」が密かに話題を集めている。同メディアは、ヒト、モノ、ウツワの3つのカテゴリーを軸にUAの魅力を多角的に発信しており、PV数は非公開としながらも順調にファンを獲得。今では社内外から記事掲載・取材の売り込みを受けるほどだ。同業他社も似たようなオウンドメディアを持つが、それらとUAの「ヒトとモノとウツワ」の違いとはーー。同サイトの運営を担当する、玉井奈緒サステナビリティ推進部副部長、吉田淳志・経営企画部全社PR統括、永井美智子・同全社PRチームに話を聞いた。
「ヒトとモノとウツワ」は同社のCSR事業を発信する目的で2015年に設立されて以来、月3本ペースで更新を続けている。玉井担当は「どうしても固い内容になりがちなCSRの取り組みを、わかりやすくユーモアや物語性を持たせて広く発信したいという思いで立ち上げました。UAがモノ作りを行う上で大切にしていることはたくさんあるので、コンテンツのアップペースは自然と維持できています」と話す。例えば同社が支援する乳がん検診の早期受診を推進するピンクリボンキャンペーンに合わせた記事では、乳がんのセルフケアの方法を具体的に紹介するなど、実用的なコンテンツに落とし込む。そのほか、副業制度を生かしてさまざまなフィールドで活躍する社員のライフストーリーなど、誰でも楽しめる身近な切り口が読者の共感を呼び、徐々に認知が拡大した。“売ろうとしないこと”を意識したシンプルで読みやすい構成が特徴だが、実は購買につながるケースも多い。
また同メディアは、ビームスやベイクルーズ グループの販売員、「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」の企画担当者など、横のつながりを生かし同業他社、ライバル社の人物が多く登場するのも特徴だ。吉田担当は「あくまで、われわれが取り扱っている商品に込められた思いや社の取り組みを伝えることが目的ですが、UAの活動に限らず読者にとってファッションそのものに興味を持つきっかけになってほしい」という。社内や社外といった枠を超え、業界全体の活性化も考えてのことだろう。
そのほか例えば、老舗シューズメーカー「ハルタ」とUAの「オデット エ オディール(ODETTE E ODILE)」のシューズデザイナーによる対談など、担当者の思いがつながったコラボ事例も同サイトから発信する。永井担当は「『ハルタ』はこれまで他のブランドと別注などの取り組みはありましたが、デザインからのコラボは今回が初めてだったようなのでデザイナー2人にその背景を語っていただきました。『オデット エ オディール』のデザイナーが“普遍的なもの”をキーワードにより正統派な一足を改めてお客様に提案したいという思いから、お声かけさせていただき実現したものです。実際に『ハルタ』の現場を訪れ、丁寧なモノづくりを見ることができ大変貴重な経験でした」と振り返る。
UAのさまざまな側面を語る同サイトは社員同士のコミュニケーションツールの役割も担う。「社員同士が同サイトの記事を読んでお互いに刺激しあったり、商品背景について学びを深めたりなど、メリットは多いです。自分が担当した商品を取り上げてくれてありがとうという反響をもらうこともあり、モチベーションにつながっています」と吉田担当。
今後は今年開始した連載企画「PRODUCT」を筆頭にサステナビリティのテーマも強化していく。玉井担当は「ファッションのエモーショナルな部分と乖離させずに、今、社会全体で考えていくべき課題であるサステナビリティをいかに読者に自分ごと化してもらうかが課題です。お客さまに気持ちよく購入していただく語り方や表現を探っていきます」と語る。