女性の就労率はこの30年間で右肩上がりに伸び、現在は就労者の 4 割を女性が占めている。そういった環境の中で、日本の企業健診の検査内容は1970年から変わっておらず、女性の疾患率・死亡率の高い子宮がんや大腸がん、乳がんの健診は十分に備わっていないのが現状だ。
9月に設立された現代女性の健康問題解決を目的にする医療コンサルティング会社、ファムメディコ(FEMMES MEDICAUX)は、子宮、大腸、乳房を対象にした新しい女性向けの健診「YOU健診」の啓発活動を開始した。“YOU”とは子宮、大腸、乳房それぞれの部位の形をアルファベットになぞらえた言葉。子宮がん、大腸がん、乳がんの3つのがん検診に加えて、子宮内膜症や子宮筋腫などの疾患を総合的に健診できる内容になっている。
“女性疾患に対する、女性のリテラシーは低い”
ファムメディコを設立したのは薬剤師で、医療コンサルタントとしてのキャリアを持つ佐々木彩華・社長。佐々木社長は月経困難症やPMSを経験し、女性医療の分野に興味を持ち立ち上げた。社名はフランス語で女性医療を意味する。佐々木社長は「(女性疾患に対する)女性の知識が足りないと感じていた。現在の一般的な企業健診では、オプションで子宮頸がん、マンモグラフィーが受けられる場合はあるが、子宮筋腫・卵巣腫瘍などの疾患を発見するための経膣超音波や、大腸がんの内視鏡検査はオプションにすら入っていないことがほとんど。企業健診に入っていないことから“子宮頸がん検査で異常がなかったら、自分の子宮に異常がない”と思っている人は多い」と指摘する。
ファムメディコでは、企業を対象に社内で働く女性に向けたセミナーを行い、女性特有の疾患について啓発活動を行っていく。「まずは女性自身が知って、個人で健診を受けてもらうことがファーストステップ。企業に検診の仕組みを取り入れてもらうハードルは高く、判断には時間がかかるが、女性たち個人のリテラシーが高まることで底上げ式に、企業の人事、自治体へと伝わって変わっていくはず」と佐々木社長。
女性疾患のケアを浸透させる一助になりたい
また、「これまでも市場では厚労省や経産省が“メタボ”を啓蒙しきた中で、疾患に対する意識が高まった。今厚労省や経産省でも『多くの女性が働く社会で、女性疾患もしっかりケアしなければならない』という空気になってきたが、まだ企業には根付いていない。それをどう浸透させられるかが課題であり、私たちも一企業としてその一助になりたい」と語った。
ファムメディコでは社内セミナーに加え、企業に向けた健康経営のサポート、クリニックへの医療コンサルティング、女性特有の疾患に向けた商品の企画開発、調査・研究サポートを行っていく。賛同医師には、細胞診専門医・医学博士の上坊敏子(相模野病院婦人科腫瘍センター顧問)、国際アンチエイジング医学会 米国抗加齢医学会専門医の浜中聡子(Dクリニック東京ウィメンズ院長)、産婦人科医師・医学博士公衆衛生学修士の吉田穂波(神奈川県立保健福祉大学 ヘルスイノベーション研究科 教授)らが名を連ねる。賛同医師たちと共に企業向けのセミナーなどで「YOU健診」の啓発活動を行っていくほか、2021年春には開院支援をするレディースクリニックが東京・丸の内にオープンする予定だ。
これまでファムメディコは10月に三越伊勢丹ホールディングスの社員・スタッフに向けて女性疾患についての知識を学ぶセミナーを開催。11月からは三菱地所 の「まるのうち保健室」と取り組み、丸の内で勤める女性たちに向けたヘルスケアイベントを行っていく予定。今後も働く女性の環境や制度を整えて「YOU健診」を推進する参加企業を募っていく。