サステナビリティ

YKKが2050年までに「気候中立」 サステナビリティの新ビジョン発表

 YKKは2050年までに「気候中立(climate neutral、実質排出ゼロ)」を達成するための「YKKサステナビリティビジョン2050」を策定した。同ビジョンは、19年に策定した「YKKグループ環境ビジョン2050」と10項目のSDGs(国連サミットによって採択された持続可能な開発目標)の達成に向けて5つのテーマで構成した。

 1つ目のテーマは「気候変動」。世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べ、1.5℃に抑える努力を追求するパリ協定の目的を支持し、ファスニング事業における温室効果ガスの削減に取り組む。

そのための取り組みは下記のとおり。
・18年と比べてScope1(自社の直接排出量)とScope 2( 電力など自社で消費したエネルギー起源の間接排出量)で50%削減、Scope3(サプライチェーン等その他の間接排出量)で30%削減を目指す。
・50年までに温室効果ガス排出ゼロ(カーボンニュートラル)を目指す。
・製造方法と設備の改良、オペレーションと各工程の効率化を追求し、エネルギー使用量を削減する
・19年以降石炭使用設備の新設を廃止する。30年までに全ての石炭使用設備を廃止する
・ファスニング事業拠点に再生可能エネルギー発電施設を可能な限り設置する
・Scope2の排出削減のために、可能な限り外部から再生可能エネルギーを購入する

 2つ目は「資源」。持続可能な資源の採用を増やす。ファスニング事業で製造される商品や使用される梱包材の材料の環境負荷を低減し、持続可能な素材へと移行することで商品のライフサイクルを通じて発生する廃棄物を削減、石油由来材料の使用を削減、および循環型社会の実現への貢献を目指す。

そのための取り組みは下記のとおり。
・30年までにファスニング商品の繊維材料を100%持続可能素材(リサイクル材、自然由来材料等)に変更する
・30年までに、ファスニング事業で使用する全てのビニール・プラスチック製梱包材を持続可能な素材や回収・再利用など持続可能な形態に変更する
・全ての製造拠点において埋め立て、あるいは焼却される廃棄物の排出量を削減する
・30年までに廃棄物の再資源化率を90%まで向上する

 3つ目は「水」。水の利用量の削減と排水管理を強化する。深刻な水資源の枯渇・劣化問題に対して、ファスニング事業において取水量の削減や排水の環境負荷低減等に取り組む。

そのための取り組みは下記のとおり。
・水資源問題が懸念される地域の製造拠点で、水使用の効率化・再利用などの取り組み強化し取水量を削減する
・政府の規制および、ZDHC(有害化学物質排出ゼロ)のような業界基準を基に制定した自社基準に従い、全ての製造拠点において排水管理を徹底する

 4つ目は「化学物質」。将来世代に豊かな生活を残すため、ファスニング事業に関わる化学物質による環境への影響・負荷を最小限にとどめる。

そのための取り組みは下記のとおり。
・ZDHCの製造時制限物質リスト(MRSL)などの業界基準を基に制定した自社基準に従い、商品製造における入口から出口までの化学物質使用を管理し、化学物質の使用削減をさらに進める
・安全な繊維製品の証明「スタンダード100(Standard 100 by OEKO-TEX)」のような業界基準を順守し、商品における規制物質の使用を廃止する
・有害化学物質を削減し排除するような新しい製造方法を開発する

 5つ目は「人権」。人権の尊重と公正で安全な労働環境の維持に努める。全ての人間の尊厳と権利を尊重するという世界共通の理念を重要視し、多様で持続可能な社会に貢献する。
そのための取り組みは下記のとおり。
・多様性を認めた包括的な人権の尊重と労働環境の整備の徹底により、一人ひとりが個性を活かして働ける安心安全な職場環境をサプライチェーン全体で形成し、健康で幸せに満ちた生活を支援する
・YKKの精神“善の巡環”とISO26000(企業における社会的責任に関する国際規約)に基づいたYGCC (YKK Global Criteria of Compliance)監査を全YKKグループの製造拠点を中心に実施し、第三者機関による定期的な監査も実施することで、透明性を維持しつつ持続可能な活動への更なる改善を行う

 大谷裕明社長は「当社は本業を通じた持続可能な社会の構築を常に追求し続けている。こうした企業活動全ての根幹にあるのが創業者の吉田忠雄による企業精神“善の巡環”だ。『他人の利益を図らずして自らの繁栄はない』という思想は社会や関連業界と共に栄え続けようとするYKKグループの企業精神を鮮明に表しており、サステナビリティに通ずる考え方であると捉えている。当社は“善の巡環”のもと、事業・商品を通じてサステナビリティの本質に向き合い、ソーシャルグッドな企業であり続けるためにチャレンジを続ける」とコメントを発表した。

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