ハースト婦人画報社のウェブメディア「ウィメンズヘルス(WOMEN’S HEALTH)」は、10月1日から31日まで50のレッスンを配信するオンラインイベント「ラブ ボディ プラス(LOVE BODY +)」を開催中だ。ヨガ、ワークアウト、美容、料理などのレッスンを、人気のインストラクターや美容家らが生出演して行う。有料と無料のレッスンを織り交ぜて構成しているが、早々に有料レッスンの参加費だけでイベントの黒字化を達成するなど、予想を上回る反響を得ている。
平日は毎晩8時、土日は朝から晩にかけて2〜4本のライブ配信を、Zoomやユーチューブ、インスタライブを通じて毎日行っている。講師陣はトレーナーでモデルのAYA、美容家の石井美保、長井かおり、モデルのケリー、エミ・レナータ、女子体操選手の畠田瞳、畠田千愛ら豪華な顔ぶれ。同じ会社の「エル(ELLE)」などとも連携し、内容の充実を図った。無料レッスンを含めれば参加者は2万人を超える見通しだ。
企画した「ウィメンズヘルス」の影山桐子編集長は「オンラインでやるならリアルに負けないスペシャル感を出したかった。なので1カ月の間、毎日途切れなく続けることにこだわった」と話す。
例年ならばこの時期に読者を集めた大規模なイベント「フィット ナイト・アウト(FIT NIGHT OUT)」を開催していた。昨年は延べ2000人を動員するなど、盛り上がりを見せた。今年もだいぶ前に会場を押さえていたものの、コロナで中止を余儀なくされた。
フィットネスをテーマにする媒体のため、春以降にスポーツジムの休業が広がったことは痛手だった。「何かアクションを起こさないと」と考え、緊急事態宣言直後の4月10日からインスタライブでヨガやワークアウトのライブ配信を始めた。編集部のスタッフは慣れない動画制作に悪戦苦闘しながらもゴールデンウイークも休まずに40回重ねると、参加者は延べ1万人に達した。リアルイベントに比べればコストが格段にかからず、参加者からの評判もよい。手応えを得て、10月のオンラインイベントを企画するに至った。
ヨガに参加した地方在住の女性からは「有名な先生のレッスンが受けられてうれしい」といった声が届く。人気のインストラクターは東京に集中する。そんな物理的な壁を超えて体験価値を届けることができた。影山編集長は「私たちは『コロナのせいで』と言いがちだが、『コロナのおかげで』可能になったこともある」と考える。
オンラインイベントを収益化するための設計にも知恵を絞った。50レッスン受け放題の通常チケット(5000円)だけでなく、受け放題のギフトセットチケット(7500円)を企画して「ルルレモン(LULULEMON)」のオリジナルTシャツ、「ハッチ(HACCI)」のコラーゲンドリンク、「エスト(EST)」の美容液ミニセットのギフトボックスをつけた。それ以外にもウエアや化粧品、フィットネス用品などとチケットのセット販売メニューを充実させた。同社のECサイト「エル・ショップ」のプラットフォームを活用し、参加者にはお得な価格で商品を提供し、EC事業としても収益をあげる仕組みだ。人気アイテムは次々に完売した。
コロナ禍において雑誌もウェブメディアも広告収入に依存したビジネスモデルが難しくなり、転換を迫られている。そんな中、影山編集長は「価値あるコンテンツであれば、きちんと対価をいただけることに自信が持てた」と話し、今後はオンラインレッスン以外でも新しいアイデアを具現化していく予定だ。