「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」は10月19日、2021年春夏コレクションを東京・南青山の本社で発表した。7月にメンズの「コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME DES GARCONS HOMME PLUS)」のショーを同会場で開いたが、従来はパリで発表しているウィメンズの「コム デ ギャルソン」が東京でコレクションを披露するのは1999年以降は初で、21年ぶりのことだ。会場は赤いライトで照らされ、コンクリートのような囲いが建てられた空間。部屋に入ると、ソーシャル・ディスタンシングを取るために間隔を開けたパイプ椅子が並んでいる。
透明のウレタンで包まれた造形的なドレス群
定刻の10時、ノイズ音とともに登場したファーストルックは「プレイ・コム デ ギャルソン(PLAY COMME DES GARCONS 以下、プレイ)」のアイコニックな目のモチーフをランダムにプリントしたAラインドレス。上からテーブルクロスに用いられる透明なウレタンで包み、ボリュームのある襟が可愛らしく装飾されている。
その後も1ルックずつ、電車の通過する音、風の音など異なる生活音、ノイズが流れ、モデルがゆっくりとランウエイを歩く。優しいトーンの音に合わせて登場したのはバラの形をしたトップスに、波打つようなドレープが印象的なウレタンのスカート。それから、ドット柄のバルーンシルエットのスカートなど、造形的なシルエットが次々と登場する。モチーフは「プレイ」の目だけでなく、初期のコミック調のミッキーマウスや、カラフルなミニーマウス、モノトーンのベアブリック(BE@RBRICK)などのキャラクターをあしらったプリントを採用し、上からウレタンでラッピング。プリントの一部には、スプレーで描かれたグラフィティがのせられている。
いずれもベースになっているのは、シルエットは正統派なクチュールドレスの形。そこに日常で目にするウレタンやレース、キャラクターたちのモチーフ、グラフィティなどの相反する要素を合わせて、不協和音を生み出した。それらの予想外のミックスは、新しい美しさを追求するポジティブなエネルギーを放っている。
“予想外のことが起こっても、後で心地よければ、それが理想”
川久保玲デザイナーはショー後にプレス関係者の前に姿を見せて、今回のコレクションについて数分説明した。「相反する要素の不協和音がポジティブなパワーを生むということがテーマ」。「世の中には面白いことや、予想外のこと、悪いことも起こるが、終わったとき静かに考えて心地よかったと思えれば、それが理想です」と一言。新型コロナが与えた世の中への影響は計り知れないが、“必ずしも全てが悪いことではない。前を向いて、新しい日常で新しいものを生み出し続ける”―― そんなポジティブなメッセージを受け取った。