ファッション

良品計画やユニクロが志向する“ソーシャルな企業”とは? 「本当に世の中のためになる企業しか生き残れない」

 「WWDジャパン」「WWDJAPAN.com」編集部では現在、11月9日発売の「無印良品」特集の取材や編集作業を進めています。同特集に反映するために、読者の皆さんに「あなたにとって『無印良品』の定番は何ですか?」などを尋ねるアンケートも行っています。まだご回答されていない方は、是非こちらからご協力ください(10月25日回答締め切り)。

 さて、今回の「無印良品」特集ですが、キーワードはずばり“ソーシャル(な)企業”です。そんなふうに書くと「“ソーシャル企業”って一体何のこと?」という声が多数聞こえてきそうですが、端的にいえば、会社という経済活動を通して、社会の課題解決に臨む姿勢を持った企業のことでしょうか。コロナ禍を経て価値観が大きく変わった社会では、自社や株主だけの利益を短期的に追求するような企業はもう支持されない。他を利することができる企業が長い目で見て成長していく――。ESG(環境、社会、ガバナンスの頭文字)経営という言葉とも共通しますが、そのような考え方を持った企業が“ソーシャル企業”であり、それを先進的に実践してきた企業の一つが「無印良品」を率いる良品計画だと「WWDジャパン」「WWDJAPAN.com」編集部は考えました。それが特集を企画した経緯です(……と、エラそうに語ってきましたが、企画の言い出しっぺはデスクの林芳樹です)。

 “ソーシャル企業”たる良品計画が、過疎化・高齢化に悩む地方都市などでどのような取り組みを行っているか、それをどう実践しているかといった詳細は、是非11月9日号をお手に取ってご確認ください。ニューノーマルで求められる企業像を明らかにしていくような特集にできればと考え、現在取材チームで鋭意製作中です。

ユニクロは「国家に代わるプラットフォーム」になる?

 さて。話は変わりますが、「ユニクロ(UNIQLO)」や「ジーユー(GU)」を抱えるファーストリテイリングも良品計画と同様に、事業活動を通して社会課題を解決していくような存在であるべき、ということを近年強く打ち出しています。柳井正会長兼社長は、これまでもいくつかの会見や発表の場で、「社会課題を解決する企業でないと生き残れない」「ソーシャルな存在になる」といったことを繰り返し語ってきました。

 先日行われた2020年8月期決算会見でも、非常に印象的な発言がいくつかあったので引用しておきます。「われわれは、服の領域で社会を支えるインフラになる」「世界的に経済格差や政治対立が拡大しているが、優れた経営者や知識人と話していると、これまでの国という基盤に代わる、グローバルなプラットフォームが育ちつつあると感じる。(中略)今私が描いている夢は、世界の優れた個人や企業と連携し、国家や民族に代わる真にグローバルなプラットフォームを作ること。これは私の個人的な願望ではない(=夢物語ではなく企業として目指す形だ)。本当に社会のためになる企業しか生き残ることはできないし、世界中の消費者がそういう企業のことを商品を買って応援してくれる」。

 以上は、決算会見の中で柳井会長が行った「ファーストリテイリングの今後の展望」というプレゼンの中に出てきたものですが、「国家に代わるプラットフォーム」という話のスケールの大きさに驚くとともに、「経済人というよりも、なんだか哲学者ないしは国際政治学者の話を聞いているような気分だ」と思った人も少なくないと思います。私もその一人です。米中対立や欧州をはじめ各国で深まるマイノリティ排斥の動きへの危機感などを反映しているのでしょうが、「自社がこの混沌とした世の中の問題にどうコミットできるか」「どう役に立てるか」という視点をこんなふうに明確に言葉にする存在って、前述の良品計画とファーストリテイリングを除くと、日本のファッション関連企業にはあまりないのかもと思います。内には秘めているが口には出していないというケースもあるんでしょうが、「口には出さずに結果を残す」的な日本的美学は、残念ながらもう時代に合いません。

 柳井会長はコロナ禍の中でも他アパレル企業と比較すると業績が好調である理由を問われて、「自分のために(商品を)作っているんじゃない、誰かのために作っている。それが基本理念としてわれわれにはある。何のために事業をしているのか、何のために企業を運営しているのか、そういうことを突き詰めて考える企業が、この業界(ファッション業界)にはこれまで少なかったんじゃないですか」とも話していました。確かに、「このデザイン、カッコいいでしょ?」「他にはないでしょ?」といった、いわば自らのエゴでモノ作りをするのがこれまでのファッションビジネスだったと思います。しかし、商品が飽和しきっている時代&コロナ禍という危機の中では、もうそういったあり方ではなかなか消費者の支持を得られない。アパレル企業は根本的なマインドセットを変えるべき転換期に差し掛かっているんだなと、改めて感じます。

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