「グッチ(GUCCI)」は、2018年から提携しているアバター開発スタートアップのジーニーズ(GENIES)との契約を拡大し、ユーザーが「グッチ」のアプリ内でオリジナルの3Dアバターを作成できるようになったことを発表した。これに伴い、同ブランドは3Dアバター用のアイテムを販売する。
ジーニーズはこれまで2Dのアバターを提供してきたが、それが3Dになったことで、着用している服や小物などの質感がリアルに伝わるようになっている。また2Dアバターを使用できるのは、ワッツアップ(WhatsApp)、フェイスブック・メッセンジャー(Facebook Messenger)、アイメッセージ(iMessage)など主要なメッセージアプリに限定されていたが、3Dアバターでは、提携先企業が自社アプリ内にジーニーズのアバター用ソフトウエア開発キットを組み込むことでより広範囲に使用することが可能となった。
「グッチ(GUCCI)」はジーニーズと提携した初めてのラグジュアリーブランドで、これまでは2Dアバターに着せられるアイテムを提供していた。ロバート・トリフス(Robert Triefus)=グッチ エグゼクティブ・バイス・プレジデント兼最高マーケティング責任者は、「当社は以前から自由に自己表現することをサポートしている。ジーニーズと提携したことで、『グッチ』の顧客や従業員がより自分らしい“デジタル版の自分”を作成できるようになった。当社にはおよそ2万人の従業員がいるが、アバターを使い、自分らしいスタイルを発信するなどして楽しんでいる」と語った。
しかし、こうした“楽しさ”は売り上げにつながるのだろうか。同氏は、「楽しいことが必ずしも売上増につながるわけではないが、ブランドに対して親しみや好感を持ってもらうことに役立つ」と話す。「現在は『グッチ』の製品を購入できない若年層も、アバターを通じてブランドの世界観に触れることで、将来的な顧客となる可能性がある。またコロナ禍の影響によって実店舗での顧客サービスが提供しにくいので、デジタル世界での買い物体験をより楽しいものにしたいという狙いもある」という。
ジーニーズはまた、ジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)、カーディ・B(Cardi B)、リアーナ(Rihanna)、ショーン・メンデス(Shawn Mendes)らのセレブリティーや、バスケットボール選手などの一流アスリートと提携した“アバター・エージェンシー(Avatar Agency)”を19年に設立。セレブが自身の公式アバターを使って独自の商品をファンに販売できるほか、アパレルブランドなどがセレブと提携し、その公式アバターに商品を宣伝してもらうこともできるという。
アカシュ・ニガム(Akash Nigam)=ジーニーズ共同創業者兼最高経営責任者は、「セレブリティーからの厳しい要求に応えることで、当社の優れた技術がさらに磨かれた。当社の3Dアバターは他社の追随を許さないほど洗練されており、360度で商品を見せたい企業も満足できる仕上がりとなっている。また従来の2Dアバターは使用できるアプリが限定されていたが、3DアバターはVR(仮想現実)およびAR(拡張現実)プラットフォームやゲームなどでも使用できる、次世代のアバターだ。これを使うことで、セレブリティーやブランドはこれまでにない方法でファンとの関係を強化できるだろう」と説明した。
なお現時点では、「グッチ」に加えて、GIFアニメーションのデータベースおよび検索エンジンであるギフィー(GIPHY)がジーニーズの3Dアバターを導入している。ギフィーは、20年5月にフェイスブック(FACEBOOK)によって買収された。