伊藤忠商事は、先進的なサステナブル経営で知られるベトナムのデニム工場サイテックス(SAITEX)と業務提携契約を締結した。サイテックスは「エバーレーン(EVERLANE)」や「ジースター ロゥ(G-STAR RAW)」などとの取り組みなどで知られ、環境問題が取り上げられることの多いデニム産業の中で異色の存在だ。伊藤忠は、サイテックスが来年から稼働を予定する紡績と織布の一貫工場の、オーガニックコットンの優先的なサプライヤーになるとともに、日本と中国でのジーンズの販売権を取得した。日本での取り組みの第1弾は日本屈指のインフルエンサーのローラがスタートしたサステナブルブランド「ステュディオ アール スリーサーティー(STUDIO R330)」で、同ブランドのジーンズは伊藤忠を通じてサイテックスが生産した。
伊藤忠ジーンズ・カジュアル課の山口大輔課長代行は、「サイテックスは世界的に見ても類を見ない先進的なサステナブル工場だ。サステナブルだけでなく、米国の有力なジーンズクリエイターやディレクターをベトナム本社やサテライト工場のサンフランシスコのクリエイティブディレクターとして招聘しており、クリエイティブ面でもピカイチ。『R330』をフックに、日本にもサステナブルジーンズという新しい市場を開拓したい」と意気込む。
サイテックスは、2019年版「BoF500」にも選出されているサンジーブ・バール(Sanjeev Bahl)氏が2005年に創業。ホーチミン郊外の工業団地にジーンズの加工工場を構えている。同社は1日に使用する工場排水の98%を再利用できる廃水処理施設やバイオマス発電などの先進的なサステナブル工場で、公益性の高さを証明する「Bコープ(B-corp)」認証をアジアで初めて取得しているほか、ジーンズ工場としては世界で唯一「ブルーサイン(bluesign)」認証を取得している。また、オゾン染色やレーザー加工、全自動ロボットによるダメージ加工などの最先端のジーンズ加工機械も揃える。
サイテックスは現在、同じくホーチミン近郊に21年の稼働を目指し、紡績からロープ染色、織りまでの一貫生産工場の仮設を進めており、こちらも先進的なサステナブル工場になる見通し。「オーガニックコットンからプレオーガニックコットン、再生ポリエステル『レニュー』など多彩なサステナブル素材がサイテックスの方向性と完全に一致した」と山口課長代理。ローラの「R330」ジーンズの価格は1万3500円。「サステナブルでハイファッション、そして高品質というジーンズの新市場を切り開いた。こうした市場をもっと広げていく」。