9月28日〜10月6日に2021年春夏シーズンのパリ・ファッション・ウィークが開催された。今季はミラノに続いてリアルとデジタルの両軸で行われ、来場者のほとんどはフランス在住者のようだった。ショーの大幅な遅れもなくスムーズではあったが、街はどこか寂しげだ。ストリートフォトグラファーのアダム・カッツ・シンディング(Adam Katz Sinding)のスナップや、現地を訪れたファッション業界人の言葉から、異例のパリコレを振り返る。
リアルの重要性を再確認
元ドイツ版「グラムール(GLAMOUR)」の編集者で現在はフリーのファッション・コンサルタントとして活動するヴェロニク・トリストラム(Veronique Tristram)は「リアルの重要性を再確認した」と語る。「『プラダ(PRADA)』や『ジェイ ダブリュー アンダーソン(J.W.ANDERSON)』はデジタル発表でも面白みがあったけど、リアルとは比べるに値しない。リアルならではの雰囲気や高揚感は、ほかに取って代わることはできないのだと初日から感じたわ」。
スローダウンで見つけた感謝
ジェム・トゥ・シェ・トワ(J’ai me tout chez toui)の名でカップルインフルエンサーとして活動するアリスは、デジタルが融合したことで発見があったようだ。「従来よりもスピードがはるかに遅いため、一瞬一瞬に感謝することができた。急ぐ必要がないから業界の人々とゆっくり会話ができたし、カフェでお茶を楽しむ時間すらあったの」。
パリコレだという実感がなかった
リアルのショー会場では、ソーシャル・ディスタンス確保のために座席は大幅に減少した。そのためバイヤーの顔ぶれは少なかった印象だ。仏「トム・クレイハウンド・パリ(Tom Greyhound Paris)」のバイヤーであるエカテリーナ・グラズノヴァ(Ekaterina Glazunova)は「パリコレだという実感がなかった」と話す。「実際の展示会場に行って、この業界には物理的な体験が必要だと改めて感じたわ。やっぱり商品は実際に目で見て、触れて、試着するべきなのよ。ただ業界全体に変化が必要なのも事実だから、今季を皮切りに新しいスタートが切れることを期待したいわね」。