「ランコム(LANCOME)」は、全世界でベストセラーの看板製品“ジェニフィック”シリーズでも着目する肌の常在菌「マイクロバイオーム」研究に関するシンポジウムを開催した。近年、スキンケアでマイクロバイオームに注目した製品は増えており、その重要性は明らかだ。先駆者である「ランコム」の研究者らが、その効果とほかとの違いについて語った。
ーーそもそもなぜ、このタイミングでシンポジウムを開催したのか?
アニー・ブラック(Dr. Annie Black)=「ランコム」インターナショナル・サイエンティフィック・ディレクター(以下、ブラック):ここ数カ月で、私たちの生活や人との交流の仕方に大きな変化がありました。マスクの着用で肌に変化を感じている人も多いはずです。長期間使用すると、肌に刺激を与える可能性があり、さらに皮膚を閉塞します。マスクの下の皮膚は高温多湿な環境にさらされ、皮膚バリアの弱体化、乾燥、発疹、さらにはニキビにつながる可能性があります。そんな今だからこそ、肌のバリア機能を高めることが大切だと感じており、その役割の一つをはたすのがマイクロバイオームなのです。
ーー肌のバリア機能とは?
ブラック:私たちの体の最外層である皮膚は、外部刺激や乾燥から守ります。簡単に言えば、肌に良いものを入れたり、悪いものを入れないようにしたり機能します。このバリア機能には、健康なマイクロバイオームが不可欠なのです。
ーーマイクロバイオームとは?
ガブリエル・アーマッド・コードル(Dr. Gabriel Ahmad Khodr)=ロレアル アドバンスド リサーチ インターナショナル・マイクロバイオロジー・サイエンティスト(以下、コードル):人の体に存在する微生物のことを指します。皮膚の表面に存在するマイクロバイオームは私たちの皮膚の防御に大きな役割を果たし、体と環境の間の交換を調節します。マイクロバイオームを形成するさまざまな微生物間のバランスは、私たちの肌の健康と美しさに欠かせません。 しかし、このバランスは日常のさまざまな刺激や生活習慣により頻繁に脅かされます。
ーー日常にあるさまざまな刺激とは?
コードル:紫外線や大気汚染、加齢、喫煙、投薬、栄養不足、さらには心的ストレスなどが含まれます。基本的に肌は、私たちのライフスタイルを反映しています。また、洗顔やクレンジングも(良い菌を)攻撃する可能性もあるのです。これらの要因によりマイクロバイオーム内のバランスが崩れると、乾燥や感染症、湿疹、ニキビなどさまざまな皮膚障害を引き起こす可能性があります。つまり、マイクロバイオームのバランスを維持することは皮膚の健康のために非常に重要なのです。
ーーこのバランスを取り戻すには?
コードル:起こってしまった刺激のケアには、やはりスキンケアでいたわることが大切でしょう。ただし、上から塗布する化粧品だけでなく、生活習慣を見直したり、食事に気をつけたり、内側からのアプローチも同様に大切です。内臓のマイクロバイオームを健康に保つことは、肌のマイクロバイオームにも作用されるとも言われています。
ーー最近はマイクロバイオームに着目したスキンケアも多く見かけるが、“ジェニフィック”はほかと何が違うのか?
コードル:“ジェニフィック”の処方には、マイクロバイオームの“エサ”となるプレバイオティクスと、美容効果をもたらすプロバイオティクス由来成分を特許取得済みの方法でバランスよく配合しています。
ブラック:なお、全てのプレバイオティクス・プロバイオティクスが皮膚のマイクロバイオームに有益であるわけではありません。
「ランコム」は、何百もの組み合わせを研究して、皮膚のマイクロバイオームに作用するものはごくわずかであることを発見しました。私たちが厳選した7種のプレバイオティクス・プロバイオティクスは、肌を保護、制御、回復する能力をサポートするのに優れた組み合わせです。また、「マイクロバイオティックスが入っている」とうたう他社製品もありますが、本当はプロバイオティクスをそのまま入れようとすると、冷蔵保存する必要があるんです。われわれはバイオテクノロジーを生かし、常温保存できるようにマイクロバイオティクスを処理し、処方に配合することに成功しました。
以前から内臓のマイクロバイオームについての研究は盛んに行われてきましたが、皮膚のマイクロバイオームを16年前から行ってきたわれわれはパイオニアと言えるでしょう。ただ、まだまだ明かされていないことも多く、日々進化している分野でもあります。だからこそ今回シンポジウムを開催しましたが、今後も多くの研究が生まれると思いますし、スキンケア分野において最もホットなトピックスの一つでもあると思います。