90年代の裏原カルチャーを牽引してきたブランドの1つ「ア ベイシング エイプ(R)(A BATHING APE(R)以下、ベイプ)」にとってコラボレーションはブランドカルチャーに根付くものだが、昨今はストリートの枠を超え飲食や自動車業界など多岐にわたり、そのスピード感にも驚かされる。改めて今、業界の内外で存在感を増している同ブランドの狙いを山野辺一徳クリエイティブ・ディレクター(以下、山野辺)に聞いた。
WWD:最近とくにコラボアイテム発売のニュースが続いているが、その背景は?
山野辺:転換期は2018年にブランド設立25周年を記念して行った「BAPE XXV」プロジェクトだった。表参道ヒルズで開催したアニバーサリーイベントでは国内外の40以上のブランドやアーティストとのコラボが実現した。その中で「スワロフスキー(SWAROVSKI)」や「フォーミュラ1(F1)」などの異業種とコラボしたことで、われわれだけでは実現できないアイデアが形になり、コラボの新たな可能性を感じた。
WWD:ストリートブランドのイメージが崩れる心配はなかったのか?
山野辺:ストリートブランドとして始まったが、もうその枠には括られたくない。28年間変わらず大事にしているのは多様性や意外性をそなえた発信力のあるブランドであり続けることだ。
WWD:コラボ先にとって「ベイプ」の魅力は何?
山野辺:圧倒的な認知度は武器だ。「ベイプ」の名前は知らなくても、サルのアイコンやカモフラージュは多くの人が認知している。知り合いの子どもが「ベイプ」ばかり着ていたことで興味を持ち、声をかけてくれたというコラボ相手もある。28年経った今、いろんな人のライフスタイルに「ベイプ」が入り込んでいるのを実感している。
WWD:「NARUTO-ナルト- 疾風伝」や「ドラゴンボール」など、日本のアニメとコラボする狙いは?
山野辺:アニメを題材にしたコラボはとくに海外で人気で、供給が追い付かないくらいだ。ヒップホップアーティストの中にも「ドラゴンボール」ファンがいるなど、音楽文化とのつながりも深い。“ベティ・ブープ(BETTY BOOP)”や “ガーフィールド(GARFIELD)”、サンリオキャラクターなどは日本では意外に思われるかもしれないが、グローバルでは根強い人気。広くアンテナを張る「ベイプ」のフィルターを通すからこそ実現できたコラボだ。
WWD:客層はどのように変化してきた?
山野辺:最近はとくに海外出店に注力し、アジア、欧米など海外ファンが増えた。国内では1990年代の原宿カルチャー世代から、今の若い子たちまで広くリーチできている。過去のアーカイブをアップデートして発表するアプローチが功を奏し、昔からの「ベイプ」ファンには懐かしく、若い層には新鮮に受け止めてもらっているようだ。
WWD:今後はどんなコラボを企画している?
山野辺:これまで以上にコラボする業種の幅を広げたい。とくにインテリアなどのライフスタイルを強めたい。また現在ロンドンやニューヨークに新店舗を準備中だ。オープン記念のコラボアイテムに加えて、今後は出店先の文化を反映したコラボなども企画する。