英国発のナチュラルコスメブランド「ラッシュ(LUSH)」は、香りの瞑想を楽しむブランド初のパフュームを使ったスパトリートメント“ルネサンス”の提供を開始した。今回、“ルネサンス”を実際に体験。折り重なっていく香りに包まれながら、“瞑想”にも似た深いリラクゼーションに導かれるという感覚を味わった。
“ルネサンス”はイタリア・ルネサンス期の医療の“四体液説”にインスピレーションを得た、香りと瞑想を取り入れたスパトリートメントだ。“四体液説”とは、体は4つの体液(血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁)からできているとする説。さらに世の中にある生きとし生けるものは全て熱・冷・乾・湿の4つの性質を有するとも考えられていて、この4つの性質のバランスがとれているときは健康でいられるが、どれかが過剰にあったり、欠乏したりしているときには病気になる、という当時の考え方がスパのベースとなっている。
体験のスタートはコンサルテーションから。4つのスペース(血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁)に仕切られた円が描かれたシートが登場し、それぞれのスペースには“落ち着き”“嫉妬深い”“ぶれない”“遊び心がある”など多数の言葉が記してあった。担当してくれたスパセラピストのサエ氏から「この1週間の自分の感情を最も表した言葉を1つ選んでください」と言われ、記者は“忍耐強い”を選択。すると、4種類あるパフューム(“ネロ”“フランジパニ”“コンフェッティ”“サッポー”)の中から“ネロ”が差し出された。
「香りをかいでパフュームを選んでしまうと、自分が好きだと信じている香りしか選ばない人が多い。そうではなく、自分の潜在意識が求めている香りを見つけることが重要で、ルネサンス期の4体液説の考え方を取り入れたコンサルテーションでそれを可能にした。お客さまからは『自分が思ってもいなかった香りと出合えた』などと好評で、選んだ香りを最初に嗅いだときはぴんとこなくても、施術を終えて帰る際にはそのパフュームを購入する人も多い」とサエ氏は話す。
また、自分が選んだ言葉に合った香りは“今の自分の感情にバランスをもたらしてくれる香り”で、選んだ言葉の対角線上の言葉に合った香りは“今の自分に足りないものを補ってくれる香り”なので、そのどちらを使うことも可能(対角線上の香りを使ってバランスをとることを“逆療法”という)。実際に2つをかいでみて、施術に用いるパフュームを決める。
トリートメントルームに入ると、選んだパフューム“ネロ”のベースノートの香りを、スパセラピストがトリートメントに使用するベッドに振りかける。続いて、ミドルノートの香りを取り入れたマッサージバーで、肩からデコルテをマッサージ。その際、施術内容に合わせて手を冷やしたり温めたりし、温度にまで気を配っていた。ラストには、トップノートの香りの温かなミストで部屋が満たされた。そして、最後に完成された香りが“ネロ”の香りなのだという。トリートメントルームを出たあとは、独自の演出が施されたティータイムがあり、スパは終了となった。
“旅する感覚”を求めて来店する顧客も
トリートメントとして行われたマッサージは、“穏やかな振動”程度の軽いもの。あくまでもメインは香りで、“香りを道しるべに瞑想の世界へ”というコンセプトの通り、香りと振動、そしてルネサンス期の宮殿や教会でレコーディングした音楽で、休息や深いリラクゼーションをもたらす“異空間”へと導いてくれるスパだった。一般的にマッサージを主体としたスパが多い中、全く新しいリラクゼーション体験で、香りの可能性を最大限に感じさせてくれた一方、もう少し多くの種類の香りを体験したいとも思った。
「“ルネサンス”に限らず、ラッシュスパのコンセプトは“あなたに贈る、特別な時間と空間”。旅をするかのように、日常の生活からエスケープするような体験を提供している。コロナ禍で海外旅行が制限される中、旅するような感覚を求めて来店するお客さまも多く、客数は昨年よりも増えている」という。
「ラッシュ」には調香師がいて、パフュームの香りも自社で作っている。その中の一人、エマ調香師は「香りは音楽や本、旅や感情などからインスピレーションを得て開発している。“ルネサンス”に関しては、歴史学者のローズ・バイフリート氏が、ルネサンス期に関するたくさんの情報や本を持って私たちのラボを訪れたときから開発がスタート。そして半年間一緒に仕事をして開発に至った。開発した香りの中で、“ルネサンス”に使うパフュームは4種類。例えば“ネロ”は、花々と香水で編成した豪華な宴会で有名な皇帝ネロなどからインスピレーションを受けた、ネロリやベルガモットの香り。“フランジパニ”は、ルネサンス期に革製の手袋についたタンニンの香りを隠すためや、皮を柔らかくするために使われていたアーモンドオイルが含まれた、ライトでつけやすい香りとなっている」と話す。