モンクレール(MONCLER)は、2025年までにサステナビリティへの取り組み強化計画として、「ボーン トゥ プロテクト サステナビリティ プラン(Born to Protect Sustainability Plan)」を発表した。
同プランは、気候変動対策、持続可能な循環型経済、公正な資源調達、多様性の強化、そして地域社会への還元という5つの戦略的要素を主軸としており、21年までにカーボンニュートラルを世界的に実現し、23年までに100%再生可能なエネルギーを世界規模で採用するなど、各項目でいくつかの目標が設定されている。
モンクレールでは長く使用できるデザインを採用し、環境負荷の少ない素材を使用することによって廃棄物を削減するという循環性を保つため、使い捨てのプラスチック素材は使用せず、端切れのリサイクルやサステナブルなナイロンを使用する方針を打ち出した。具体的には、23年までに80%以上のナイロンの端切れをリサイクルし、25年までに使用するナイロン生地の50%以上をサステナブルなものにする。また、23年までに従来の使い捨てプラスチックの使用をゼロにすることも想定している。
21年1月からは、DIST認証(Down Integrity System and Traceabilityの略)のあるダウンのリサイクルも開始する。DIST認証は、外部機関が原料の産地や詳細、生産ルートなどが明確で、徹底した品質管理が行われていると認定した製品に付与される。モンクレールが15年以降に購入した全てのダウンはDIST認証を受けており、このような最新技術を用いて生産したダウンをリサイクルする場合は、従来のダウンに比べて水の使用量を約70%削減できる。
加えて、23年までに主要な原材料の全てを追跡可能にし、25年までに80%以上のサプライヤーが同社のコンプライアンス基準を高水準で満たすことも目標としている。ビジネスパートナーと緊密に連携し、サプライチェーン全体を通じて社会および環境面における問題点を改善する狙いだ。
また、「ナーチャー ジーニアス(Nurture Genius)」プロジェクトの一環として、21年1月までにダイバーシティー&インクルージョン協議会を発足し、社内外文化の改革も図る。22年までに全従業員が異文化理解を深めるための3カ年プロジェクトに参加し、23年までには職務や文化間の枠組みを超えた新たな組織モデルも導入する予定だ。
一方で、社会的価値の高いプロジェクトを2年に1度実施し、22年までには全ての従業員がボランティア活動に参加することも明らかにしている。
モンクレールは近年の取り組みで、23年までに防寒対策を必要とする10万人の人びとを支援することを確約しており、ユニセフ(UNICEF)と共に「ワームリー モンクレール(Warmly Moncler)」というプロジェクトも立ち上げ、過去3年間で社会情勢が困難かつ世界で最も寒さの厳しい地域において、約4万5000人に上る子どもたちを支援してきた。
レモ・ルッフィーニ(Remo Ruffini)会長兼最高経営責任者は、「世界は緊急の課題に直面している。今回のパンデミックは、私たちの未来をよりよいものにするために何ができるかを気付かせてくれた。一個人としても、組織としても、企業としても、こうした課題に対処するためには大きなエネルギーが必要だ。そうしたエネルギーは、同じ目標を掲げる人びとが一致団結することによってのみ発揮される。新たな場所で革新的な解決策を見つけるためには、新しい考え方や働き方に対してオープンであることが重要だ。モンクレールは、小さな一歩が素晴らしい結果につながるという認識の下で状況を模索し、改善していく」とコメントした。
モンクレールは、世界のファッションブランドやサプライヤー、小売業者などで構成される気候や生物多様性、海洋の保護に取り組む「ファッション協定(THE FASHION PACT)」にも加盟しており、7月にはプラダ(PRADA)やサルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)など業界のほかのブランドと同様に、イタリアに拠点を置く銀行グループのインテーザ・サンパオロ(INTESA SANPAOLO)から、金利などの貸付条件に環境負荷の削減目標の達成度合いを連動させた4億ユーロ(約492億円)のサステナビリティ・リンク・ローンも受けた。
モンクレールでは製品パッケージの90%にサステナブルな素材を使用しており、17〜19年には二酸化炭素排出量を30%削減している。またイタリアやルーマニアに所有する製造拠点では、再生可能なエネルギーを100%使用するなど、長年にわたってサステナビリティへの取り組みを行ってきた。19年には「ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(Dow Jones Sustainability index)」にも選出され、繊維、アパレル、ラグジュアリー製品部門でインダストリー・リーダーにも選定された。