三井不動産と三井不動産リゾートマネジメントは、京都の二条城前に「ホテル ザ 三井 京都」を11月3日に開業する。17世紀末から250年以上にわたって存在した三井総領家の邸宅跡に開発した。同グループの旗艦ホテルの位置付け。自社ホテルブランドのなかでは最高級クラスにあたり、初のラグジュアリーホテルとなる。
開発コンセプトは「継承と新生」。300年前に建造された梶井宮門や庭園の景石、灯籠など受け継がれてきた遺構をよみがえらせ、現代のデザイナーらによる施設デザインと一体にすることで、歴史性と先進性を兼ね備えた空間を作った。敷地面積は約7500平方メートル。ホテル中央には大きな水盤を伴う約1300平方メートルの回遊式庭園を配置した。中庭を取り囲むように建てられた地下1階〜地上4階建ての建物は、スイートルーム22室を含む全161室の客室と4つの料飲施設、スパなどで構成される。1階ロビー&ラウンジから広い開口部を通して望む中庭の景観は圧巻だ。
平均でも50平方メートルを超える客室は、世界遺産の二条城が眼前に広がる「プレジデンシャルスイート」をはじめ、天然温泉を引いた露天風呂と坪庭を備えた「Onsenスイート」など多彩な部屋タイプを用意。香港出身のアンドレ・フー(Andre Fu)氏がインテリアデザインを手掛け、モダンに昇華した和の空間美で外国人観光客の感性にも訴える。三井家が所蔵する国宝美術品をモチーフにしたアート作品も見所だ。宿泊料金は1泊2日8万2000円から。213平方メートルのプレジデンシャルスイートは同130万円。
同ホテルならではの空間といえるのが、地下約1000mから湧き上がる天然の温泉水を活用した約1000平方メートルのスパエリア「サーマル・スプリングSPA」。水着を着用して入る天然温泉プールでは水、音、光、石が一体となった幻想的な空間が広がり、五感に心地よく響く。「地下を掘って汲み上げている天然温泉は京都のラグジュアリーホテルのなかでもここだけ。庭園や地下温泉など京都の町の真ん中にリゾート地のような異空間が広がっている点が他のホテルとは一線を画している」と楠井学総支配人は胸を張る。他には三井家10代当主の三井高棟が客人をもてなした奥書院「四季の間」も総檜造で当時のまま再現。春夏秋冬と二十四節気などを表現したふすま一面に広がる水墨画絵は一見の価値がある。
同地と三井家のつながりは、三井家の元祖であり、繁栄の礎を築いた高利の長男、高平が1691年に居を構えたのが始まり。明治初期までは三井全体の統轄機関だった「大元方(おおもとかた)」も設置されていた。太平洋戦争直後の財閥解体によって三井家の手から一旦離れたが、2015年に再び土地を取得。それまでの53年間は藤田観光が京都国際ホテルを運営していた。
コロナ禍でかつてない厳しい経営環境下での開業となったが、Go Toキャンペーンの後押しもあり、11月の客室稼働率は想定よりかなり上回るペースで推移する。三井不動産ホテル・リゾート本部の佐々木大也主任は「海外旅行からの振替などもあり、国内の富裕層に日本のラグジュアリーホテルの良さを知ってもらえる好機。中長期的には、これまで以上に京都に魅力を感じて訪れるゲストが増えると確信している」と期待を寄せる。
ただ、コロナ以前の計画ではインバウンド比率を約7割に想定していた。当面は国内客の誘客が中心となるが、方針自体はぶれていないという。「日本人客にもフォーカスしたホテルにしようと取り組んできた。地元京都の人が誇れるホテルにしていきたい」と楠井総支配人。京都のみならず、日本を代表するブランドとして世界に認められるホテルをめざしている。