英・ロンドン発「ユアライブ」は、ユーザーがタッチパネルディスプレイで自由にカスタマイズしたデザインを、プリントや刺しゅうでTシャツ、トートバッグ、キャップなどにその場でライブプリントし、提供するサービスだ。2013年に英国のユアストア社がサービスを開始し、日本のほか米ニューヨークやロサンゼルス、韓国、香港にも支社を持つ。日本法人のユアジャパンは2017年から「ヴォーグ(VOGUE)」とのコラボレーションを皮切りにファッション、ビューティ、エンタテインメント分野へ裾野を広げている。
「自分だけの1着」を
その場で届ける
同社のカスタマイズサービスは、専用アプリを搭載するタッチパネル式のモニターで行う。直感的な操作で誰でも簡単にデザインできるのが特徴で、アパレルで最も導入事例が多いTシャツであれば好みのカラー、グラフィックやレタリングを選択・配置し、自分だけの一着を作ることができる。
アーティストのライブやレセプション、ポップアップストアなどにモニターをプリンター機とともに導入する事例も多く、デザイン決定から数分でTシャツにプリントをアウトプットし、その場で手渡しが可能だ。会員や顧客などに向けた特別なサービスとして、差別化している企業もある。「デザインを自分で作れて、しかもそのTシャツがその場で手に入るという、2度の感動を感じていただけるサービスはほかにない」と由羽弘明ユアジャパンCEOは胸を張る。モニターのみを設置しているアパレルの店舗などでも、ユアジャパンは親会社コネクトインターナショナルがオンデマンドプリントの製造工場・配送網を抱えているため、注文から1〜2週間ほどの短納期で客のもとへ届けることができる。 グローバルではすでにユアライブのサービスの活用が大きな成果につながっている事例もあり、「ポロ ラルフローレン(POLO RALPH LAUREN)」は定番のポロシャツのカスタマイズ商品が大きな収益源の一つになっている。
消費者の生の声を元に
ブラッシュアップ
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リアルイベントから事業を始め、消費者と直接接点を持ってきたユアジャパンは、BtoBサービサーでありながらその先を見据えた「顧客体験」に何より重きを置く。「大物アーティストのドームツアーに付いて全国を行脚したこともあれば、ゴルフイベントで大雨の中ライブプリントをしたこともある。お客さまの生の声を第一にブラッシュアップを重ねてきた僕たちのカスタマイズのシステムやプリントの品質は、他に負けないという自負がある」(鈴木由洋ユアジャパンCOO)。サービスは本国のひな形を元に、クライアントに応じて柔軟にアレンジし納品する。そのため、クライアントのブランドイメージ、顧客特性などをコンサルティングした上での最適なサービス設計も重要なポイントだ。たとえば、一年以上をかけて作り上げ、11月に渋谷パルコに導入する「ポケモンデザインラボ」のTシャツのカスタマイズサービスは、151匹という膨大なキャラクターとデザインの組み合わせをストレスなく選べる仕組みづくりに腐心した。「ファンは小さいお子さまから年配のお客さままで幅広い。お客さまがどこまでのカスタマイズ性を求めているか、どこに楽しさのツボがあるかを考え、設計の最適解を導き出していった」。
ECでのカスタマイズサービスを
拡大
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コロナ禍で消費者の価値観や消費行動が急激に変化しているが、「小売業の多くが存在意義が見直しを迫られる中、低リスクかつサステナブルなオンデマンドビジネスに活路がある」(由羽CEO)とみる。今後注力するのが、EC上でのカスタマイズサービスの拡大だ。「カスタマイズサービスはこれまで、あくまで“プラスアルファ”のサービスとして捉えられてきたが、いよいよ既製品と同列で語られる時代がくる。僕らはその先駆者として成果を出し、カスタマイズサービスの存在感を高める役割の一旦を担うとともに、世界を視野に事業を拡大していきたい」。
YR Japan
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