ドラッグストアやバラエティーショップで取り扱われているアイテムにはロングセラー商品が数多く存在する。なぜ安定した売り上げが続いているのか、何をきっかけに人気に火がついたのかなど、毎回、一つのブランドをピックアップ。ブランド誕生から現在までを振り返りながら、ブランドのターニングポイントとなった出来事について探っていく。
“プチプラ”のイメージが
「安かろう悪かろう」から
「安くても安心」に変化
グループ会社である井田両国堂は化粧品の卸をしていたが、1963年に担当者が欧米に化粧品の視察に行ったところ、現地のドラッグストアやGMS(総合スーパー)で手に取りやすい価格で化粧品が販売されていたことに感銘を受けた。「日本でも安価にコスメを提供したい」と思い、井田ラボラトリーズを設立し1985年に「キャンメイク(CANMAKE)」を立ち上げた。最初はリップやチーク、アイシャドウなどのポイントメイクとネイルアイテムを発売。価格は500〜1000円に設定し、種類も豊富にそろえたことから特にネイルが売れ筋になった。
ただ当時は、低価格かつドラッグストアやバラエティーショップで手軽に購入できる“プチプラコスメ”は、「安かろう悪かろう」というイメージがまだ強いとき。「特にベースメイクアイテムは苦戦しており、認知度はまだまだだった。しかし、98年発売のコンシーラー“カラースティック”をヘアメイクアップアーティストの嶋田ちあき氏が雑誌で紹介したことが転機となった」と同社キャンメイク部PRチーフの山口裕紀氏は振り返り、コンシーラーは想像以上の反響で、これまで10代後半〜20代前半がメインだった客層が大人層にも広がったという。
「キャンメイク」の認知度が上がり幅広い層に愛されるようになった後も10代後半〜20代前半のメインターゲット層は変えずに、「年代を選ばない可愛さのエッセンスを残したシンプルなパッケージデザインを心がけている」と述べる。また、セルフ販売のため使い方が誰にでもわかるように、パッケージにできる限りの情報を詰め込んでいるのもこだわりだ。
「キャンメイク」といえば、アイシャドウやチークなどが一番人気と思われるが、ダントツの人気を誇るのは2011年に発売したフェイスパウダーの“マシュマロフィニッシュパウダー”で、シリーズ累計2800万個を突破している。「口コミでじわじわと売り上げを伸ばしたアイテム。フェイスパウダーは化粧直しなどに使用されることが多い“人前需要”があるため、例えばトイレで同僚や同級生と一緒に化粧直しをする際、『プチプラだと恥ずかしい』という意識も生まれる。そのため“マシュマロフィニッシュパウダー”は、ブランドロゴをパッケージに溶け込ませたさりげないデザインにしている点も支持された」と分析する。同製品は来年3月末にリニューアルを控え、パッケージもよりシンプルに進化する予定だ。「トレンドを押さえた新製品を毎月登場させており、今後も引き続き、飽きさせない製品と売り場作りを提供いていく」と話す。