雑誌「プレイガール(PLAY GIRL)」がフェミニズム雑誌として紙版で復活した。表紙モデルを務めたのは妊娠中のクロエ・セヴィニー(Chloe Sevigny)で、淡いミントグリーンの背景に立つ様子をファッション・フォトグラファーのマリオ・ソレンティ(Mario Sorrenti)が写した。上部には“ここからは任せて(we’ll take it from here)”という文字が綴られている。
同雑誌は1973年に、女性を起用するグラビア雑誌「プレイボーイ(PLAY BOY)」に対抗して創刊。裸の男性やセクシーな写真を中心としたコンテンツに加えて、堕胎や権利平等といったトピックについても発信した。フェミニズム運動活動家のグロリア・スタイネム(Gloria Steinem)やマヤ・アンジェロウ(Maya Angelou)、ジョイス・キャロル・オーツ(Joyce Carol Oates)といった著名人も編集や執筆に携わり、女性の権利向上や性に関する社会的革命をけん引した。また、当時ゲイの読者層も獲得した。その後80年代には表紙がセレブリティーの洋服を着用したものが中心となり、2015年に廃刊。当時の方向性は創刊時とは大きく異なり、最後に発行された同誌の表紙には水着姿の男性4人が起用され、謎の木や水がたたずむ中ポーズを決めている。
今回復刊した「プレイガール」は中でも創刊当時の雰囲気を持っていると、発行人のリンドリー・クーンス(Lindley Kuhns)はいう。16年から復刊に向けて動き始めたクーンスは、「『プレイガール』がフェミニズム雑誌だったとは知らなかった。私が知っていたのはテレビで取り上げられるような中身も内容もあまり重要でないもの。しかし過去の号を見たとき、マヤ・アンジェロウの寄稿文をはじめとして、ファッションやアートなどいろいろなカテゴリーから女性のエンターテインメントを扱っていて驚いた。これをより美しく大切な雑誌に発展させたいと思った。70年代の性の革命のルーツに敬意を表明すると同時に、さまざまな切り口から現代の女性体験を取り上げて、前向きな情報発信を行う媒体になりたい」と述べた。
今号は全272ページにわたり、文化から政治、セックスまで全てを女性の視点からカバーしている。数々のインタビューが行われ、セヴィニーは新しい“母性”への疑問、ブリタニー・ニューウェル(Brittany Newell)はBDSM(ボンデージ、ディシプリン、サディズム、マゾヒズムの頭文字をとった言葉)について、アイビー・エルロッド(Ivy Elrod)は家族とアイデンティティー、カーヴェル・ウォーレス(Carvell Wallace)は男性を愛し家父長制を憎むことをテーマに語っている。
また特集では“プレイガール ヒーロー”と題し、家事労働者の権利促進を掲げる非営利団体の創設者であるアイジェン・プー(Ai-jen Poo)やトランスジェンダーの権利活動家であるラケル・ウィリス(Raquel Willis)、活動家でありBLM(Black Lives Matter)運動の共同設立者として知られるアリシア・ガーザ(Alicia Garza)をはじめとする女性の活動家10人を取り上げる。
写真ではイギリス人フォトグラファー、ハーリー・ウィアー(Harley Weir)による「Power. Play.」といった作品を通して21世紀のパラダイムシフトを紹介し、ほかにも年齢を重ねることのリアルさを表した作品や、新しいセクシーを表現したもので当たり前とされてきた美の概念に挑戦している。
内容に多様性が欠けていると批判された元祖「プレイガール」とは異なり、クーンスは「ジェンダーに包括的で、世代を超えたダイナミックな女性の経験を反映するよう努めている」と言う。「“不思議”なことに、紙面には男性のヌードより女性のヌードの方が多い。次の号は男性のヌードの方が多いかもしれないし、今回はたまたまこういう結果になった。初号ではヌードは載せているが『これはポルノではない』という前例を作りたかった」と語った。