ラグジュアリーEC大手ファーフェッチ(FARFETCH)、中国最大手EC企業のアリババ(ALIBABA)、そして「カルティエ(CARTIER)」などを擁するコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)は11月5日、グローバルな戦略的パートナーシップ契約を締結した。それぞれの専門知識と幅広いリーチを生かし、デジタルとリアルの領域をシームレスに統合することで次世代のラグジュアリーリテールを目指す。
アリババとリシュモンはファーフェッチに3億ドル(約312億円)ずつ投資するほか、ファーフェッチが新たに設立した合弁会社ファーフェッチ・チャイナ(FARFETCH CHINA)に2億5000万ドル(約260億円)ずつ投資して、合計25%の株式を取得する。なおアリババとリシュモンには、3年後にファーフェッチ・チャイナの株式をさらに24%取得するオプションが付与されている。
提携の一環として、ファーフェッチはアリババが運営する高級品に特化したEC「ラグジュアリー・パビリオン(LUXURY PAVILION)」、同アウトレット専用プラットフォーム「ラグジュアリー ソーホー(LUXURY SOHO)」、同越境ECサイト「Tモールグローバル(TMALL GLOBAL)」に、ラグジュアリー専門のショッピングチャネルを開設する。これにより、ファーフェッチに出店するブランドはアリババが抱えるおよそ7億5700万のユーザーにリーチできるようになるという。
なお、リシュモンは2018年5月にラグジュアリーEC最大手のユークス ネッタポルテ グループ(YOOX NET-A-PORTER GROUP以下、YNAP)を傘下に収めており、同年10月にはアリババとパートナーシップ契約を締結。YNAPとアリババは合弁企業を設立し、中国版モバイルアプリを開発しているほか、「ラグジュアリー・パビリオン」にオンラインストアをオープンしている。
また今回のパートナーシップとは別に、「グッチ(GUCCI)」などを擁するケリング(KERING)のフランソワ・アンリ・ピノー(Francois Henri Pinault)会長兼CEO一族のプライベートな投資会社アルテミス(ARTEMIS)は、ファーフェッチに対する既存の投資に加えて、新たに5000万ドル(約52億円)相当の株式を取得する。
ファーフェッチのジョゼ・ネヴェス(Jose Neves)会長兼最高経営責任者(CEO)は、「当社はラグジュアリー業界のデジタル化を推し進めているが、今回のアリババおよびリシュモンとの新たなパートナーシップは、それをさらに加速させるものだ。両社およびアルテミスから合計11億5000万ドル(約1196億円)もの投資があったことは、当社のラグジュアリー業界のグローバルプラットフォームとしての強固なポジションを裏付けている。ポストコロナ世界におけるラグジュアリーブランドのさらなる成長を支援するべく、さまざまな方法を模索していきたい」と語った。
アリババ・グループのダニエル・チャン(Daniel Zhang)=エグゼクティブ・チェアマン兼CEOは、「今回のパートナーシップは、ラグジュアリー業界およびテクノロジープラットフォームの世界的なリーディングカンパニー同士を結び付けて、高度に補完し合えるようにするものだ。25年には世界全体の半分を占めると予想されている中国のラグジュアリー市場は、デジタルネイティブの若い世代が非常に多い。リシュモンとの提携をさらに強化し、ファーフェッチと新たな関係を構築することで、ラグジュアリーリテールのデジタル化を推進し、消費者に新たな買い物体験を提供していく」と説明した。
リシュモンのヨハン・ルパート(Johann Rupert)会長は、「よいパートナーシップは企業をさらに強くする。今回の提携は互いに高度に補完し合えるもので、これによっていっそうシームレスなオムニチャネル体験を顧客に提供できるようになる。われわれが目指す次世代のラグジュアリーリテールの実現に向けて、ダニエル、ジョゼ、そしてフランソワ・アンリと協力し合うことができてうれしく思う」と述べた。
アルテミスのフランソワ・アンリ・ピノー会長は、「ここ数年でラグジュアリーリテールにおけるECの可能性はさらに高まっており、中国市場の重要性も増すばかりだ。ファーフェッチはラグジュアリー業界のオムニチャネル化を推し進め、消費者の買い物体験を向上させた。その将来性を確信しているので、今回同社に対する投資を追加した。ファーフェッチ、アリババ、そしてリシュモンと共に、次世代のラグジュアリーリテールを実現していくことを楽しみにしている」と話した。