マスクを着けることが日常となってから何カ月になるだろうか。暑い夏にも耐え、短い秋が過ぎようとし、乾燥の気になる冬が間もなく訪れようとしている。唇の荒れを訴える声をよく聞くようになったのは、確か、夏が終わろうかというころ。それを裏付けるかのようにリップケアアイテムやリップカラーの売り上げにも影響が見られ、「マスク着用の影響により季節を問わず唇の荒れを感じる人が増えたことから、一層ニーズが高まった」と「シスレー(SISLEY)」の郡司薫コミュニケーション マネージャーは話す。リップケアアイテムだけでなく、リップカラーは高い保湿効果を備えたアイテムは注目されており、「ナーズ(NARS)」でも、「“アフターグローリップバーム”の売り上げは1.5倍の伸長率」と福島まどかPRマネージャーはいう。
「マスクは唇荒れの原因になると思う」という、皮膚科医の髙木実・新橋トラストクリニック院長に唇荒れを引き起こすメカニズムや良好な状態を保持するための対処法などの教示をもらいながら、たくさんの唇を美しく導いてきたリップケアアイテムの名品を紹介。健やかな唇をキープするためのヒントにしたい。
なぜ、マスクを着けることで唇荒れが生じるのか?
マスクを着けることで唇荒れが起きてしまうのはなぜか。「口唇トラブルの原因は大きく7つが考えられる」と髙木先生。1使用する口紅などが唇と合わない、2日焼け、3乾燥、4細菌などの感染、5繰り返す刺激、6トラブル発生時に使用する薬剤などの過ち、7ヘルペスなどの疫病の見逃し、を挙げた上で、「この中でマスクが弊害となるのは3、4、5だろう」。ダメージを受けやすいのは夏と思いがちだが、一概に言えないそうだ。髙木先生は諭す、「マスクをすると湿度が高くなることで蒸れる状態と思われがちだが、マスクを外した際に蒸発するために乾燥する。それにより皮膚が乾燥し防御機能が低下。この状態で、マスクの触れる外的刺激によりさらに口唇の荒れが悪化するのは当然だろう。また、マスクについている菌が防御機能の落ちた唇に付いた環境は、菌にとって適度な湿気や温度があれば繁殖するのは容易に想像できる」と。つまり、これからの季節を問わず留意しなければならない。
マスクを頻繁に使用する上で、注意すべきことは?
マスクを着用することが日常となって半年以上もの時間が経過したが、以前よりもマスクを着用することに慣れてきたとはいえ、不快感を持たなくなったという人は少ないだろう。「口唇を健やかに、美しく保つためにマスクには通気性を求めたいが、コロナなどの感染予防とは矛盾が生じる。朝晩のケア時も保湿することを心掛けてほしい」と髙木先生は言う。また、少しでもトラブルを感じた場合には「自己判断しないこと。医師に正しい対処方法を指導してもらうことも肝要だ」と続ける。さらに、良質で清潔なマスクを使うことと常に保湿するための薬剤などの併用が鍵とした上で、「マスクの着脱を頻繁にすることは、かえって乾燥を進めることになるため注意が必要」と述べた。
これから迎える冬に注意すべきことは「日焼け。夏ほど紫外線は強くないので油断しがちだが、口唇は最も注意してほしいパーツ」と言い、それは「口唇は他の部位と異なり、色素沈着を改善させることは大変に困難」と説明する。加えて、部屋の湿度を保つように心掛けることも大切。「理想は、50度前後」とし、「口唇を美しく保つことだけでなくインフルエンザの感染予防になる」と教示する。
長く、たくさんの人に愛され続ける保湿に優れたリップケアの名品4選
ザ・リップ バーム「ドゥ・ラ・メール(DE LA MER)」
2002年9月7日発売し、19年5月にパッケージを一新したヒット作。「マスクが必携必至となり、唇のケアの関心が高まりトレンドになっていることを実感している。お客さまからは圧倒的な効果を感じて頂いており、パンデミック前以上にご愛顧いただいている」(柏木孝之・営業本部長)。独自成分ミラクルブロスを配合。優しくタップするようにつけることで、荒れやすく薄い唇の皮膚も健やかに導き、マスク下のデリケートな唇をふっくらと柔らかく整える。公式オンラインおよび一部店舗で実施中のエングレービングサービスは、大切な人へのプレゼントにも最適。“ザ・リップ バーム”(9g、6500円)
バーム コンフォール「シスレー(SISLEY)」
05年2月の発売以来、美容業界や著名人にもファンの多いアイテム。「人気の高いロングセラー製品で、年間を通して上位をキープ。ベスト3にも複数回ランクインするほどの売れ行きとなっている」(郡司コミュニケーション マネージャー)皮脂腺のない唇は、他のどのパーツよりも繊細で外的ストレスを受けやすい。水を一滴も入れない濃密な処方で保護、保湿、栄養補給、癒やし、弾力性アップの要素を備えたリップクリームは、こっくりと重いテクスチャーで美しい唇へと育む、攻めの一品。“バーム コンフォール”(9g、7200円)
ルージュ ココ ボーム「シャネル(CHANEL)」
独自成分のイドゥラ タンドゥル コンプレックスを配合したフォーミュラが、即効性と持続性のある潤いをプラス。とろけるようなテクスチャーはこの上なく心地良く、ケアする時間を豊かにする1本。オイルと補修効果を持つ糖類をベースにする成分がつけた瞬間から滑らかな艶を付与し、使い続けることでふっくらとしなやかな唇へとアプローチ。リップスティックを塗る日常的な所作をも計算したリップケアアイテムが、心地良い唇を生む。「12年1月発売以来、リピーターが多く長年愛され続けているアイテム。マスクによる荒れや乾燥対策として持ち歩いて気軽に保湿ができるため、さらに需要が高まっている」(関菜美子PR)“ルージュ ココ ボーム”(3g、4000円)
ナリッシング リップバーム SQ「スリー(THREE)」
粘膜に近いため防御作用が弱く、ダメージが受けやすい唇のためのトリートメント。ネロリ 油やオレンジ果皮油などの4種の精油に、アマニ油やイブニングリムローズオイルなどの6種の植物油と4種の植物脂から成る豊かな処方で、みずみずしい美しさを唇に蘇らせる。また、唇が纏った芳しい被膜が嗅覚を刺激して、心地よい睡眠をパワフルにサポートする。「12年2月発売したアイテムだが、マスクによる唇の荒れを気にする人が増え、問い合せが増加。唇だけではなく、気持ちをゆるめリラックスするような芳香は心地よい睡眠のサポートにも」(齋藤未奈PR)。鼻腔に近い唇のケアは、口紅などを落とした状態が最も効果を実感できやすいと考える「スリー」、練り状リップクリームは夜のケアアイテムとして発表された。“ナリッシング リップバーム SQ”(7g 3200円)
唇を潤してくれるリップカラー その人気色2本
「ナーズ(NARS)」“アフターグロー リップバーム”の1356
唇を滑らかに保つ保湿力で、淡い色づきをもたらす、アフターグローリップバーム。高い保湿力が唇の乾燥によるかさつきを防ぎながら滑らかにし美しく整える。唇に潤いを与える独自のモノイハイドレイティングコンプレックスを配合することで、スムースに伸びる⼼地よいテクスチャーにした。シアーな色付きで、マスクににも付きづらく、極めてナチュラルで輝きの仕上がりをかなえる。今春3月に6シェードを追加し、現在8⾊をラインアップする。“アフターグロー リップバーム”(3500円)
「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」“ルージュ ヴォリュプテ シャイン”のN°80 チリ チュニック
2019年にグローバル ビューティー ディレクターのトム・ペシューの監修により発表された“チリ チュニック”。あらゆる肌トーンにもなじみ、すべての⼥性を魅⼒的にするカラーとして計算された1本。マカデミアナッツ、ウリカガーデンで栽培した美容効果の⾼いザクロエキスなどの美容オイルをたっぷり配合。体温でみずみずしくクリーミィーにとろける質感が贅沢な潤いと艶でやさしく唇を包む。絶妙なレンガ色のブラウンレッドは発売後1年以上経った今も35色を備えるシリーズで人気ナンバー1を保持する。“ルージュ ヴォリュプテ シャイン”(4100円)
渡部玲:女性誌編集部と美容専門の編集プロダクションに勤めた後、独立。2004年よりフリーランスの編集者・ライターとして雑誌やウェブなどの媒体を中心に活動。目下、朝晩のシートマスクを美容習慣にして肌状態の改善を目指している