皆川明による「ミナ ペルホネン(MINA PERHONEN以下、ミナ)」による「風景の色 景色の風 feel to see」展が東京・青山のスパイラルで開催されている。同展は今年ブランド設立25周年を迎えた記念の展示で、クリエイションの原点であるテキスタイルを始め、「ミナ」として初めて手掛けたアイテムなどブランドの軌跡が読み取れる展示になっている。会期中には、皆川によるペインティングが予定されており、オンラインでその様子が見られるほか、「ミナ」のオリジナル商品を展示販売する。
入場無料で会期は12月1日まで。会場の一部は30分枠の予約制だが、当日券も用意されている。
11月9日に開催されたプレス内覧会は朝9時にスタート。森を描いた背景に小鳥のさえずりが清々しい秋晴れの朝にぴったりの展示だ。内覧会では、小林裕幸スパイラル館長が「5年ごとに、『ミナ』の展示会を開催している。今年『ミナ』は25周年、スパイラルは35周年を迎えた。われわれには、コロナだから展覧会を中止するという選択肢はなかった。このような状況だからこそ、何かを感じ取ってもらえる展覧会になればと思う」と述べた。皆川は、「ブランドを立ち上げた当時は業界のこともよく分からないまま、ささやかなもの作りをしてきた。今では、プロダクトが人々の感情や思考につながっていくと思いながらもの作りをしている。そこから生まれる風景や景色を感じてもらえるとうれしい」とコメント。
会場は3部構成になっており、受付左は“オーシャン”というスペースで「ミナ」を代表するテキスタイルを海の波に見立ててダイナミックに展示している。今「ミナ」のアーカイブには約3000種類のテキスタイルが保管されているそうだ。その奥のスペースは、“モーション“と名付けられ、テキスタイルを素材から解き放って映像で表現。森の中の木立にさまざまなテキスタイルの映像が映し出される。それは、森の背景や天井から降り注ぐ自然光と相まって、まるで森林浴をしているように心が安らぐ。この映像インスタレーションオランダを拠点に活動するクリエイターの遠藤豊が手掛けた。
受付の右には、“0→1”というスペースで、「ミナ」が最初に作ったさまざまなものが展示されている。そのスタート地点には、いくらの箱が置いてある。ブランド設立当時は魚市場で働いていた皆川が、道具の仕分けに使っていたものだ。初めての展示会のインビテーションや初めてのニット、初めての家具などさまざま。皆川が”ささやかなもの作り“と言っていたが、その一つ一つに愛情が注がれているのがよく分かる。トレンドやマーケティングといったファッション業界のルールに囚われず、妥協せずに独自のスタンスで活動してきた「ミナ」のもの作りは一過性ではない。各クリエーションのについて考え抜き、丁寧に大切に作り上げるというプロセスがある。そのような背景がプロダクトに息づき、それを手に取る人々に伝わっているのだと感じた。コロナで自然を求める人が増えているようだが、都心にいながら森林浴した気分になれる、そんな展覧会だ。