ファッション

嘘がないから、アスリートは影響力を高めているのだと思う エディターズレター(2020年9月29日配信分)

※この記事は2020年9月29日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

嘘がないから、アスリートは影響力を高めているのだと思う

 大坂なおみ選手の行動やメッセージ発信がたびたび話題になっていますね。私もインスタグラムをフォローしており、新しい写真が上がるたびに「応援しています!」と心でつぶやきながら「いいね」を押しています。BLMのスローガンを記したTシャツ姿で登場したり、犠牲者の名前を書いたマスクを連日着用して勝ち続けたりと、人種差別に対する抗議を堂々と発信する姿は時に批判の対象にもなっていますが、それ以上にポジティブなムーブメントを起こしています。自身の影響力の大きさを十二分に理解した上で、起こす行動を尊敬します。

 アスリートの社会的な影響力は年々高まっているように見えます。もちろん、以前からトップアスリートが着用するシューズやウエアはマーケットを盛り上げてきましたが、今はマーケットにとどまらず、一般の人たちの行動に影響を与えるアクティビストとしての側面が強まっていると思います。

 なぜだろう?それは彼らの仕事に「嘘がないから」だと私は思います。彼らの仕事は言うまでもなくスポーツです。鍛え上げ、全力の姿を見せ続け、そして勝ち続けること。その結果があってこそ、言葉に説得力が生まれます。嘘などつきようがない、実に過酷な世界ですよね。でもだからこそ、フェイクニュースが溢れて何が本当か見えにくかったり、耳に刺激的な強い言葉だけが先行したりする今の世の中で、彼らの言葉は信頼され、ファンはヒーローと同じものを自分も身につけたいと思うのでしょう。

 大坂選手が全米オープンで優勝した直後に「ナイキ」がインスタグラムの「NIKEWOMEN」というアカウントで出したお祝いメッセージがよかった。

 「You won on your own, but you played for many.」
 「あなたは独力で勝利をつかんだ。大勢のために闘いながら」

 嘘がない。これはとても大きな価値なんだとあらためて思います。ファッションはこのこととどう向き合えるでしょうか?

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