日本環境設計が手掛ける「ブリング(BRING)」は“服から服を作る”をコンセプトに、古着の回収から仕分け、さまざまな用途に分類し、その中の古着から再生したポリエステルを用いた製品販売を行う循環型の仕組みを確立した。加えて、その仕組と原料を他のアパレル企業や商社、再生事業者と共有し、業界全体を巻き込んだプラットフォームを形成した。公益財団法人日本デザイン振興会が主催する2020年度グッドデザイン賞のビジネスモデル部門では、この仕組みが評価され「グッドデザイン金賞」を受賞。アパレルブランドにおける受賞は6年ぶりとなった。
ペットボトルを原料にした一般的なマテリアルリサイクルでは、色を完全に脱色することが難しいため、一度しかリサイクルできない点が課題だった。同社のケミカルリサイクル技術ではまず、回収した廃棄衣料を化学的に分解し、溶け出したポリエステルを分子レベルで脱色。これにより、透明なポリエステル樹脂を作ることができ、繰り返しリサイクルすることを可能にした。再生したポリエステル樹脂は石油から作られるバージンポリエステルのものと同等の機能性を備える。
中村崇之営業業務部プロダクトマーケティング課課長は「現在、ポリエステルは繊維生産量の約6割にあたる約5200万tを占めると言われている。そこでわれわれはポリエステル繊維自体をサステナブルなものに変えていく必要があると考えた」と話す。
現在「ブリング」と提携して服の回収に取り組むブランドの数は約100。そのほか「ヴォーグ ジャパン(VOGUE JAPAN)」が主催するファッションショッピングイベント「ヴォーグ・ファッションズ・ナイト・アウト トウキョウ」などのイベントや地域のマラソン大会などにも出店する。「1店舗しかないような地方の小さなブランドから、『無印良品』のような大きなブランドまで幅広く取り組んでいて認知は拡大している」が、実際に回収で集まる衣服のほとんどがリユースできるものだという。同社の再生ポリエステルの原料となる100%ポリエステル製の衣服は回収されたもののうち約5%程度。中村課長は「回収したものは素材に合わせて提携先のリサイクル工程に回している。原料は足りていないのが現状だ。服から服を作ることができるという認識を広め、回収の文化を醸成していきたい。いろんなブランドに参加してもらい、世界中のポリエステルを再生ポリエステルに変えてくことを目指す」と語る。
今年5月にはオリジナルブランドを立ち上げ、これまでボディー販売していたTシャツに加えて、アンダーウエアなど商品ラインアップを拡充していく。10月24日に東京・丸の内にオープンしたアウトドアブランド「アンドワンダー(AND WANDER)」の店舗では、「ブリング」の商品を販売し、一部商品を対象に刺しゅうのカスタマイズサービスなどを実施している。中村課長は「たくさんのブランドに使ってもらうことで、自分たちのお客さま以外にも循環型を体験してほしい。消費者が自然とファッションを楽しむ中で原料がサステナブルに変化していくべきだろう」と話す。今後はポリエステルの機能性を生かしたアウトドアマーケットに向けた商品を展開していく予定だ。