フルラ USA(FURLA USA)は日本の民事再生法に当たる米連邦破産法第11条の適用をニューヨーク州の破産裁判所に申請した。新型コロナウイルス感染拡大によって3月に店舗閉鎖を強いられたことや、客足の減少したことが店頭のパフォーマンスに大きな影響を与えた。
フルラは1927年にアルド・フルラネット(Aldo Furlanetto)がイタリアのボローニャで創業。創業家一族のフルラネット家による家族経営で、世界中に500店舗以上を持つ。アメリカでは89年に事業を開始。8つのアウトレットを含む14店舗を展開し、2019年の売上高の7%をアメリカ事業が占める。
破産裁判所に提出した資料によると、フルラ USAの19年における売上高の大半は実店舗が占めており、2200万ドル(約22億円)で全体の60%近くを構成している。また卸売りの売上高は約1300万ドル(約13億円)で約35%、ECでの売上高は約280万ドル(約2億8000万円)で約7%を占める。
同資料の中で、フルラ USAはパンデミック以前の経営悪化についても触れており、新型コロナがとどめになったと説明している。特に観光客より地元の買い物客に支えられていたインディアナポリスとボストンでの客足は過去2年間減少傾向にあり、これらのエリアの4店舗を閉じると発表した。同社は3月に一時的に14店舗閉鎖に追い込まれ、当時従業員の過半数とされる90人を解雇していた。11月現在、34人の正社員と17人のパートタイムの従業員を抱える。
なお既存のニューヨーク5番街の旗艦店は引き続き運営し、店内を改装する。同店舗にはミラノで9月にリニューアルオープンした旗艦店のコンセプトや設計を取り入れる予定だ。アメリカ全体で卸売事業も新型コロナウイルスによる打撃を受けているものの、サックス・フィフス・アベニュー(SAKS FIFTH AVENUE)やブルーミングデールズ(BLOOMINGDALE)といった大手百貨店とは今後も関係を保つ方針だ。
フルラグループ全体での19年の売上高は、18年から横ばいで5億200万ユーロ(約612億円)だった。18年の売上高は5億1300万ユーロ(約625億円)と報告していたが、意図せぬ販売先での売上高を除くことで5億400万ユーロ(約614億円)に修正した。
フルラのジョバンナ・フルラネット(Giovanna Furlanetto)社長は、再建計画についての詳細は述べなかったが、よりスリムに改善した組織でアメリカ市場に戻れるように尽力するという。「われわれはより現代的な方法で市場を再構築する必要があり、それを通じて成長していけると信じている。米国市場は依然として興味深く、戦略的に重要ではあるものの、われわれは店舗の収益化に取り組まなくてはならない。今後はより柔軟で、サステナブルなネットワークが必要だ」とコメントした。
同社は新たにカナダに2店舗をオープンしたばかり。またイタリアのフィレンツェとシエナの間に位置するトスカーナには新しい製造工場を開設した。広さ約1万9000平方メートルで、新製品の研究開発や教育施設が収容されている。