ファッション

シュプリームを買収した米「ザ・ノース・フェイス」親会社、「何も変えるつもりはない」

 「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」「ヴァンズ(VANS)」「ティンバーランド(TIMBERLAND)」などを擁するVFコーポレーション(VF CORPORATION以下、VFC)は11月9日、シュプリーム(SUPREME)を21億ドル(約2163億円)で買収する契約を締結したと発表して大きな話題を呼んでいる。

 シュプリームは、1994年にジェームス・ジェビア(James Jebbia)がスケートショップおよびオリジナルブランドとしてニューヨークで創業。世界中に熱狂的なファンがいるストリートブランドとして成長を続け、2017年には巨大投資ファンドのカーライル・グループ(CARLYLE GROUP以下、カーライル)に株式の51%を5億ドル(約515億円)で売却した。当時の企業価値は10億ドル(約1030億円)程度と見積もられている。また14年には、米投資会社グード・パートナーズ(GOODE PARTNERS以下、グード)にも株式を一部売却している。

 買収後もジェビア創業者およびシュプリームの主要なメンバーはブランドに残り、引き続きニューヨークに拠点を置く。取引は今年中に完了する予定で、カーライルとグードはそれぞれの持ち分をVFCに売却する。なお買収後に一定の業績を上げれば、VFCはシュプリームに最大3億ドル(約309億円)を追加で支払うという。

 スティーブ・レンドル(Steve Rendle)VFC会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)は、「シュプリームは非常にうまく運営されており、事業として大きな成功を収めているので、買収後も干渉したり何かを変えたりするつもりはない。シュプリームがさらに発展できるようサポートするべく、時間をかけて互いに理解を深めたいと考えている」と語った。

 ジェビア=シュプリーム創業者は、「『ザ・ノース・フェイス』『ヴァンズ』『ティンバーランド』など、当社がこれまでコラボレーションをしてきた素晴らしいブランドを擁する世界的な一流企業、VFCの一員となったことを誇らしく思っている。このパートナーシップは、シュプリーム独自のカルチャーやその独立性を維持しつつ、さらに大きく成長することを可能にするものだ」と述べた。

 シュプリームの実店舗は世界でも12店しかなく(そのうち6店は日本にある)、売り上げの60%はECによるものだ。それが幸いし、コロナ禍にあっても売上高は1ケタ台の伸びを見せている。粗利率は最大で60%程度、営業利益率は20%以上だという。またVFCは今後5年間におけるシュプリームの年平均成長率を8~10%と見積もっているが、これは「ヴァンズ」の同12~13%より低いものの、VFC全体より高い成長率が見込まれている。なお今回の買収により、VFCは少なくとも5億ドル(約515億円)の増収となる見込みだ。市場はこれを好感し、VFCの株価は9日に一時、前日比19.2%高の83.48ドル(約8598円)を付けている。

 スコット・ロー(Scott Roe)VFC最高財務責任者兼副社長は、「われわれは主にシュプリームのブランド価値を考えて取引を決定しており、シナジー創出などは織り込んでいない。当社が支援できる面もあると思うが、それはシュプリームにとって適切なものである必要がある。同社はコロナ禍においても顧客とのつながりを保ち、ECで素晴らしい業績を上げているので、当社としては新たな計画やアプローチを打ち出そうとは思っていない」と説明した。

 レンドルVFC会長兼社長兼CEOは、「シュプリームの顧客エンゲージメントに対するアプローチや、質の高い商品をコンスタントに発表する力、そして顧客の需要や期待に関する深い洞察力は本当に素晴らしいと思う。当社はここ数年、D2Cに注力しており、それに関連した部門などで年間30億ドル(約3090億円)程度の売り上げとなっている。シュプリームが顧客と非常に近い関係性を築いていることを考えると、同社の買収は当社の成長戦略にぴったり当てはまるものだ」と話した。

 VFCの20年4~9月期決算は、売上高が前年同期比29.5%減の36億8461万ドル(約3795億円)、純損益は前年同期の6億9822万ドル(約719億円)の黒字から2889万ドル(約29億円)の赤字となっている。

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