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ティックトックだけではない 中国でホットな動画アプリ

 何かと話題のティックトック(TikTok)が中国発のアプリであることは広く知られているが、中国にはそのほかにもさまざまな動画アプリがある。

 中国インターネットネットワーク情報センター(CNNIC)の「中国インターネット開発状況に関する統計報告」によると、6月時点で中国のオンラインビデオ(短時間動画を含む)のユーザー数は8億8800万人に達した。これは中国の全インターネットユーザーの94.5%を占めており、ネットを利用するほとんどの人が動画から情報を得ているということになる。

 国民の生活に密接にかかわる動画は、ファッションや化粧品業界にとっても欠かせない。中でも知っておくべき動画アプリやプラットフォームを活用事例と共に紹介する。

抖音(Douyin、ドウイン)

 抖音はティックトックを運営する中国バイトダンスが、中国向けに展開するアプリだ。見た目はティックトックそっくりの短時間動画アプリだが、実際には別アプリで、中国アカウントでなければダウンロードすることもできない。

 中国のインターネットデータ分析を行うクエストモバイル(QuestMobile)によると、新型コロナ禍の3月には月間アクティブユーザー数(Monthly Active Users、MAU)が5億を超えた。若年層に加えて30歳以上のユーザーも多く、60歳を超えたシニア世代ユーザーも増えている。芸能人や企業、KOL(Key Opinion Leader、中国のインフルエンサーのこと)が発信する高品質な動画が多いのも特徴だ。またアプリには抖音小店というEC機能があり、商品や外部ECへのリンクを貼ったライブコマースを行うこともできる。

 抖音の活用事例として、中国コスメ「完美日記(PERFECT DIARY)」が新作のアイシャドウパレットを販売する際、短時間動画の配信とライブコマースを行った。まず短時間動画では新しいアイパレットを紹介するため、コロナ禍で定番になったマスク着用時のための“マスクメイク”紹介動画を制作し、役立つ情報を得られるコンテンツとしてユーザーの興味を引いた。ライブコマースでは8人のスターを招き、抖音で芸能人コンテンツを視聴するファンを呼び寄せた。短時間動画とライブコマースを組み合わせることで、商品の認知獲得から購買促進までを一つのアプリで行っている。

快手(Kuaishou、クアイショウ)

 快手は抖音に近い短時間動画アプリだ。抖音と異なるのはユーザー層で、人口の多い内陸部(3〜5線都市、または3~5級都市)のユーザーが多い。特徴としては、ユーザー発信のコンテンツが多く、エンゲージメントが高いことを売りにしている。一般人の口コミやライフスタイルの共有が盛んだ。また抖音と同じく快手小店というEC機能を持ち、外部ECとの連携が可能なライブコマース機能もある。

 中国スキンケアブランドの「韓束(KANS)」が販売する“金剛侠マスク”は、ゴールドと炭を用いたフェイスマスクとして人気が高い。その一因に、“短時間動画映え”する見た目がある。マスクは着けると蜂の巣状のゴールド模様が現れ、誰が動画を撮っても興味深く目を引くコンテンツになる。KOLから一般人まで多くの人が着用動画をアップしており、ブランド認知の向上に役立っている。

ビリビリ(Bilibili)

 ビリビリは2009年にスタートした動画共有サイトで、日本のニコニコ動画に近いサービスだ。視聴者のコメントが動画の上を流れる“弾幕コメント”機能があり、参加型のサイトとなっている。特筆すべきは、ユーザーの8割が11〜30歳と若者が多いこと。そのため、若者にリーチしたい企業から注目されている。

 元々アニメ、コミック、ゲーム(ACG)などのサブカルチャーがコンテンツの大多数を占めていたが、現在は美容やファッションなどライフスタイルコンテンツも徐々に増えている。ほかのプラットフォームと比べて長めの動画(3〜10分ほど)を投稿するため、より専門的知識を持つ人や、ビューティテクニックのある投稿者が多い。

 企業はKOLとコラボして発信したり、生放送で視聴者とのコミュニケーションを図ったりしている。またドラマ仕立ての動画を配信して娯楽を提供しつつブランド理解を深めてもらうケースも多く、中国スキンケアブランド「自然堂(CHANDO)」はロリータやコスプレイヤーが登場する動画「支流大学」を、「ロレアル パリ(LOREAL PARIS)」は15分弱にもなる芸能人出演の短編ドラマ「時光魔暦」を配信している。

ライブコマース

 新型コロナ禍でライブコマースはさらに人びとの身近な存在になった。中国・iiメディアコンサルティングの調査によると、中国ライブコマースの市場規模は年内に9610億元(約14兆4150億円)に達し、中国の小売総額の約8.7%を占める見通しだ。

 ライブコマースは商品を売るための配信ではあるが、ブランドの認知を拡大し、理解を深めるという効果もある。最近では芸能人をゲスト起用する配信も多く、独身の日(W11)の販売期間にもさまざまな出演者が登場。中国トップのライブ配信者、薇婭(Viya)の放送には人気女優アンジェラベイビー(Angelababy)が出演。また“口紅王子”として知られる人気ライブ配信者、李佳琦(Austin)の配信にはコスメブランド「レッドアース(RED EARTH)」のアンバサダーで女優の舒淇(スー・チー)が出演した。

 さまざまな娯楽要素をライブコマースにプラスすることで、消費者は賢く買う以外の目的で視聴し、口コミがより広く拡散されるようになった。

 このほか、短時間動画にはタオバオ(淘宝)の店舗SNS機能、微淘(Weitao、ウェイタオ)やSNSアプリのRED(小紅書、Xiaohongshu、シャオホンシュ―)、ウェイボー(微博)、ウィーチャット(微信)などさまざまなアプリで動画発信が可能だ。

 情報過多な中国では、品質が成熟し娯楽性や情報性に優れた動画コンテンツは、消費者をよりひきつけるために不可欠な存在となっている。

 

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