「今年の冬こそロングブーツが売れる……!」「ロングブーツのトレンドが戻ってくる……!!」。そう言われ続けて(弊紙編集部も言い続けて)はや幾年。毎年、「やっぱり今年もダメだった……」と失意のうちに終わってきたロングブーツが、2020-21年秋冬は本当に復活している。渋谷や原宿などの街を歩いていて、ロングブーツ姿の若い女性を見掛けたという人も少なくないはず。冬が深まるにつれ、街にさらに広がりそうだ。
原宿で声を掛けた20代の女性は、「H&M」で今年買ったという膝下丈のブーツを、韓国ECで買ったテーラードジャケット、「ザラ(ZARA)」のミニスカートとコーディネート。彼女のように、ミニ丈のスカートやワンピースとロングブーツを合わせるのが王道のスタイルだ。ロングブーツも久々に見るが、ボトムスのトレンドも長いことミディ~ロング丈が続いていたため、ミニスカートやミニワンピースは新鮮。スクエアトウの黒いブーツを履いた20代の女性も、同様にミニ丈のボトムスとブーツを合わせていた。ブーツは 「カスタネ(KASTANE)」で今年購入したという。
応用編として、スリムパンツをロングブーツにインする着こなしも。美容系の専門学校生だという19歳の女性は、「マウジー(MOUSSY)」のスクエアトウのロングブーツにブラックジーンズの裾をインして、シャープなスタイリングに。彼女たちが履いているような、筒周りの太いゆったりシルエットが主流ではあるものの、ストレッチ素材でぴっちり足に沿うニーハイブーツ姿も街ではちらほら見掛ける。
店頭からもロングブーツ好調の声は聞こえてくる。シューズとバッグの専門店「ダイアナ(DIANA)」では、「8月からカタログやSNS、店頭でロングブーツを打ち出してきた結果、9月末から少しずつ売れ始め、10月に入り例年を超える売り上げにつながっている。特に35歳以下の若い客層の購入が多い」と広報担当者。1点が爆発的にヒットしているというより、さまざまなデザインが売れているという。「(ミニ丈ボトムスとのコーディネートはもちろん)ロング丈のボトムスと合わせてもさまになるような、ルーズシルエットのブーツ」が売れ筋商品の共通点で、秋口の好調を受けて急遽追加生産を決めた商品もあるという。
「アプワイザー・リッシェ(APUWEIER-RICHE)」「リランドチュール(RIRANDTURE)」など、20~30代を中心に人気のウィメンズブランドを手掛けるアルページュでも、ロングブーツがヒット中。「ミニ丈のボトムスとブーツという組み合わせだけでなく、ロングスカートとロングブーツのスタイリングも、顧客の間で浸透しつつある」(アプワイザー・リッシェ広報担当者)、「ミニのティアードワンピースとロングブーツの組み合わせが現在店頭で好評。春物でも、まだまだ寒い1月投入分ではミニボトムスとロングブーツのスタイリングを推していく」(リランドチュール広報担当者)という。
ダイアナによれば、前回ロングブーツが大ヒットしたのは「2000年代前半」までさかのぼる。ここ数年はストリートムードを背景に、冬の足元といえばサイドゴアなどのショートブーツやスニーカーが主流だった。トレンドがストリートからエレガンスに回帰する中で、単価の高いロングブーツ復活への期待は、この1~2年ファッション業界内で特に上昇。19-20年秋冬は「セリーヌ(CELINE)」がロングキュロット×ロングブーツのスタイリングを仕掛けていたこともあって、期待は最高潮レベルにまでに高まっていた。しかし、冒頭でも書いた通りリアルクローズのマーケットでは不発。街では今もショートブーツやスニーカーの着用者の方が多いが、今年、来年とロングブーツが浸透していけば、10年超ぶりのヒットも夢ではないかもしれない。