ファッション

ビンテージ古着委託販売の先駆け、高円寺「サファリ」が逆風の中で進んだ19年

 “あそこに行けばなんでもある”――うるさ方のオールドファンにもそう言わしめる古着店が東京・高円寺にある。それが「サファリ」だ。今やその名は海外にも伝わり、世界的ブランドのデザイナーやハリウッドスターが、サファリを目的に来日することもある。にもかかわらず、認知度は局地的だ。理由の最たるものは同店が委託販売店であるから。それゆえ、「WWDジャパン」をはじめ多くのファッション誌がサファリを取り上げることは、なかば“ご法度”とされてきた。しかしここ数年、メルカリなどによる個人間古着売買が日常となり、百貨店が古着店のポップアップイベントを開催、老舗アパレル企業がブランド古着店を傘下に収めるなど環境は激変した。逆風の中で歩んだ19年について、サファリを運営するフォーリーフの村山佳人社長に聞いた。

WWD:簡単にサファリの“自己紹介”をお願いしたい。

村山佳人フォーリーフ社長(以下、村山):2001年、僕が23歳の時に1号店をオープンした。今の1号店とは別の場所で、わずか7坪の店だった。

WWD:サファリといえば委託販売だが、オープン当初からこのスタイルだった?

村山:起業する際に信頼する先輩に相談したところ、「ビンテージを中心とするアメリカ古着は今後、絶対的に玉数(供給量)が減少する。だから安定的に国内で仕入れできる委託販売を選択すべきだ」と言われて決断した。当時の日本が、世界のビンテージ市場の中心地だったことも後ろ盾となった。代々木公園のフリーマーケットには今では博物館級のアイテムが、青空の下でビニールシートの上に並んでいた。

WWD:サファリの売れ筋アイテムは?

村山:「リーバイス(LEVI'S)」をはじめとするビンテージデニムが圧倒的だ。価値がいっそう高まりオーナーが手放さなくなったことで、供給が需要にまったく追い付かなくなった。原宿のベルベルジンなど有名古着店が個人客からの買い取りを始めたこともあり、どう確保するか?が最大の課題となっている。

WWD:古着ディーラーなどプロからの買い付けは現在に至るまで行っていない?

村山:サプライヤーは個人客が100%だ。内訳は委託が6割、買い取りが4割。

WWD:委託品の預かり期間は?

村山:最長で半年間。商品を回転させて、売り場を常にフレッシュな状態にすることで来店率を上げたい狙いもある。

WWD:委託販売は想像以上のアレルギー症状を生んだと聞いた。正直、われわれメディアにとっても、サファリは長らくアンタッチャブルな存在だった。

村山:おっしゃる通りで、“ここまで!?”というほどの拒否反応が出た。

WWD:その中で19年間スタイルを貫き、また店舗も増やした。

村山:現在、高円寺にはビンテージ古着の1号店、「ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)」や「ダブル アール エル(DOUBLE RL、RRL)」を扱うアメリカントラッドの2号店、イタリア物なども扱うドレス&革靴の3号店、3号店を増床して少し安価なアイテムを集積した3号店アネックス、アウトドア&ストリートの4号店の5店舗がある。またレギュラー古着を扱う、なない橋店が吉祥寺にある。実は、恵比寿にラグジュアリーブランド専門店を作ったこともあるが、すぐに閉店した。オールジャンルをフォローするのではなく、得意分野の精度を上げるべきと判断したからだ。

WWD:委託販売に対する風向きの変化を感じたのはいつ頃?

村山:3~4年ほど前だろうか。サファリでは委託主に一律、売り上げの85%を還元している。ヤフオク!やメルカリが手数料等を15%ほど取っているので、それを意識した数字でもある。かつてはジャンルやアイテムによって還元率を変えていたが、なるべく委託主に還元したいとの思いから今のシステムに落ち着いた。

WWD:委託主に手厚い理由は?

村山:古着は海外買い付けが主流だが、サファリではそれを一切していない。つまり、売りに来てくれる人がいなければ商売にならない。そのためスマホ用のシステムを開発して、販売状況を逐次分かるようにするなど、委託主の利便性を高めるための投資をしている。“こんなに予算を掛けていいのか?”と開発業者に確認されるほど、町の古着屋としてはがんばっている。

WWD:サファリのモットーを聞きたい。

村山:僕は、スペシャルなヒト・モノ・コトに会いたいからサファリを始めた。良い品を並べれば、良いお客さんが集まる。それは委託主も同じで、皆古着ファンなので、思い入れのある品を預けるなら信頼できる自分のお気に入りの店でとなる。

WWD:委託主を大切にするサファリにとってコロナの影響は?

村山:4~5月は持ち込み客が3割減った。また自粛期間中にデジタルに苦手意識のあった層がスマホでも売買できることに気付き、そちらに流れた。

WWD:サファリのEC化は?

村山:4月にEC制作サービスのベイス(BASE)を導入した。まさに救世主的活躍で、それまでEC化率はほぼゼロだったが、6~7月の売り上げの6~7割を占めるまでに急成長した。

WWD:最後に今後の目標について教えてほしい。

村山:古着の持ち込み客はもちろん、新客を増やしたい。そのためにはいっそうの認知拡大が必要で、そのためにユーチューブなど新たなデジタルツールの活用も考えている。

 ユーチューブへの参入や20代ファンによるバックアップ、ビンテージが投資対象となっていることへの危惧などについては、古着系ユーチューバーのゆーみん&きうてぃとの対談を近日公開予定なので、そちらを楽しみにしてほしい。

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