スイスを代表する時計見本市「ウオッチ&ワンダー ジュネーブ(WATCHES & WONDERS GENEVA)」は、2021年4月7~13日に予定していたリアルイベントの開催を断念した。出展者委員会は「新型コロナによる健康危機およびその不確実性を鑑み、最も責任ある決断をした」とコメントした。代わりに同期間、20年に立ち上げたデジタルプラットフォームを刷新する。
時計ジャーナリストの渋谷ヤスヒトは、「G7のフランスやドイツに比べて日本ではあまり報道されていないが、スイスは欧州で新型コロナの影響を最も受けた国の1つ。ジュネーブ州は11月1日に緊急事態宣言を再発令し、2日から部分的ロックダウンを実施している。医療もひっ迫しており、リアルイベントの中止は妥当と言える。ただし20年のリアルイベント中止決定が会期のふた月前だったことを考えると、5カ月前となる今回の決定は早かった」と話す。
「ウオッチ&ワンダー ジュネーブ」の前身である「S.I.H.H.(サロン・インターナショナル・オート・オルロジュリ)」に参加していた「カルティエ(CARTIER)」「ヴァシュロン・コンスタンタン(VACHERON CONSTANTIN)」などコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT)傘下のブランドや、ケリング(KERING)傘下の「ジラール・ペルゴ(GIRARD-PERREGAUX)」「ユリス ナルダン(ULYSSE NARDIN)」、「エルメス(HERMES)」に加えて、世界最大の時計見本市だった「バーゼル ワールド(BASEL WORLD)」から「シャネル(CHANEL)」や「ロレックス(ROLEX)」「パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE )」なども新たに参加する。
出展者委員会は「参加ブランド数を50にする」とも話しており、「『ブルガリ(BVLGARI)』や『タグ・ホイヤー(TAG HEUER)』を擁するLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)や、『オメガ(OMEGA)』や『ブレゲ(BREGUET)』を抱える世界最大の時計企業スウォッチ グループ(SWATCH GROUP)の動向も気になる」(渋谷)。
「ウオッチ&ワンダー ジュネーブ」のデジタルプラットフォームでは各ブランドの新作時計や最高経営責任者や開発者の動画プレゼンテーションが閲覧できるほか、大手ファッションECサイト「ネッタポルテ(NET-A-PORTER)」とメンズファッションECサイト「ミスターポーター(MR PORTER)」との提携により9月からネットショッピングも可能になった。