オーストリアの繊維大手レンチング・グループ(LENZING GROUP)は11月18日、ブロックチェーンを活用した新しい追跡プラットフォーム「テキスタイルジェネシス(TextileGenesis)」を導入した。これにより、全サプライチェーンを追跡できるだけでなく、デジタル証明を通して生地サンプルの物理的な検証結果を確認することができるようになる。
このプラットフォーム導入の背景には、消費者ニーズとブランドパートナーが直面するコンプライアンスリスクの増大という2つの課題に対応するというミッションがあった。同社は、アパレル衣料およびホーム・インテリアブランドにとっての最優先課題はサプライチェーンの透明化だと考え、投資・開発してきたという経緯がある。
11月5日に稼働を開始し、同社主力のアパレル向け「テンセル(TENCEL)」および「レンチング・エコベロ(LENZIN ECOVERO)」の生地を使用する全ブランドの導入が可能になり、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカの全サプライチェーンパートナーにもこのプラットフォームを提供する。
しかし、この仕組みの導入にはサプライヤーのコスト負担もあるため、簡単ではない。アパレルブランドがトレーサブルな生地を求めた場合にトレーサブルな生地を提供することが可能になる。
まずは、20年第4四半期中に南アジア(インド、バングラデシュ、パキスタン、スリランカ)に拠点を置くレンチングのサプライチェーンパートナーの導入が可能になり、21年第1四半期には中国とトルコの300社以上のサプライチェーンパートナーへ、21年第2四半期までには、ほとんどのサプライチェーンパートナーがこのプラットフォームへの導入が可能になる。
ロバート・ファン・デ・ケルクホフ(Robert van de Kerkhof)=チーフコマーシャルオフィサー兼取締役は、「1年間をかけて試験プログラムとフィールドトライアルを実施し、ブランド各社やサプライチェーンパートナーから非常に好意的な評価を頂いている。以前からブランドパートナーからはレンチング製生地のトレーサビリティーの全世界的な実施を早めるよう求められていた。今回の新システム導入と生地認証の統合により、これまでにないレベルの透明性が実現する」とコメントを発表した。
この技術を開発したインド発のスタートアップ企業テキスタイルジェネシスのアミット・ガウタム最高経営責任者(CEO)兼創業者は、「コンプライアンスリスクと評判リスクが高まる中、ファッションブランド主要100社のCEOと取締役会は今後5年以内に持続可能かつ追跡可能な生地の使用率100%を達成すると言明しており、ビジネスの最優先事項の中核として透明性を挙げている。サステナビリティとトレーサビリティーは表裏一体の課題だ」とコメントを発表。ガウダムCEOは以前から、この課題を指摘し、開発に取り組んでいた。