※この記事は2020年10月14日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
ユーチューバー時代到来。彼らは“生きることが仕事”である
「WWDジャパン」10月5日号の特集は「大解剖 ユーチューバー時代」でした。いや~取材が楽しかったです。特集制作はユーチューバーと同世代の若手記者が担当しました。私が出しゃばったりしない方がよいと頭では分かっているのですが、どうしても直接話を聞きたくていくつかの対面&オンライン取材に同行しました。「顔や生活、言葉をオープンにすることで時に傷ついたりしない?」とか、「企業案件を引き受ける基準は?」とか、「何歳までユーチューバーを続けるの?」とか、「ぶっちゃけ、どのくらい稼いでいらっしゃるの?」など知りたいことがありすぎたから(笑)。
共通していたのは、「徹底したリアル」でした。何度も聞いたのは「本当に思っていることしか言わないし、良いと思っているものしか紹介しない」といった言葉。ガッツリ食べる姿やくじける姿、何かに失敗した姿など決して美しいとは言えない姿を見せることでファンを獲得しているユーチューバーは多いですが、視聴者は「嘘」に敏感であり、それが「本当」でなければ離れます。これだけフェイクがあふれている今、なぜ一部のユーチューバーが支持されるのか、それは「嘘がないから」なんだと思います。
表紙にも登場した、あさぎーにょには企業案件がビジバシ届いているようですが、「ファンは私以上に私の好みを知っているから、嘘は絶対につかない」とブレません。彼女の強みは企画力で、ファッションや食ネタ以外に田舎の祖母との対話、飼っていた愛猫の死、友だちへのバースデーサプライズなどなど(おもしろくて見まくりました!)、生活そのものがコンテンツになっています。「人生のストーリーをそのまま発信している」とは、何と強い精神力でしょうか!私には絶対に、真似はできません(笑)。そんな彼女のオリジナルブランドの服はブラウス1型で1600枚を売ったそうです。
成功しているユーチューバーはよい意味で野心がある人が多いですね。チャンネル登録者数が79万人(これは福井県の全人口に相当する数です)の古川優香さんは、オリジナルコスメ「リカフロッシュ」の開発などが話題ですが、「私の手に負えないくらいの大きいブランドになってほしい」という〆の言葉がよかった。モノづくりをする人にはその位、自分が作るモノやブランドの未来を信じてほしいです。「業界が盛り上がらないと僕はやっていけないし、このまま終わってゆくものを見届けたくない」とは、なかむさん。彼らはそんな風に呼ばれたくないかもしれないけど、新しいタイプの “ファッション&ビューティの業界人”の登場だと痛感して自分も頑張ろう、と思ったのでした。
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