10月に開催された「楽天 ファッション ウィーク東京(RFWT)」は、半数以上がオンラインのみでコレクションを発表するという異例のシーズンだった。パンデミックによって世界の価値観が一変し、各都市のファッション・ウイークも新常態に向けて模索を続ける中、東京が目指すべき方向性とは何なのだろうか。また有力ブランドが続々と海外に発表の場を移したり、韓国や中国などのファッション・ウイークが存在感を徐々に強めたりする影響もあり、「東コレは盛り上がってない」という声が強まる状況に対してどう向き合っていくのか。7月に日本ファッション・ウィーク推進機構に加わった古茂田博事務局長に聞いた。
課題山積も今後に手応え
WWDジャパン(以下、WWD):今シーズンを振り返ってどうだった?
古茂田博JFWO事務局長(以下、古茂田):東コレ期間中の感染対策がひとまずはうまくいってホッとしている。今回からデジタルの施策を強化し、インフルエンサーがSNS投稿で盛り上げる“デジタル ボイス”や「ニューズピックス(NewsPicks)」との共催でオンラインカンファレンスを実施するなど新たな試みを始めた。課題は山積みだが、実行できたことは今後に向けての大きな一歩になるだろう。それに、新しいファッションの表現が生まれそうなポジティブな雰囲気も感じられた。JFWOとしては、まずはブランドの発信力を高めるインフラ作りに努めたい。「ファッションは面白い」というメッセージを届けるサポートをするのはわれわれの使命であるから。
WWD:東コレは以前よりも盛り上がりに欠けると言われているが?
古茂田:私自身もそれはすごく感じている。かつての東コレは大御所デザイナーも参加して熱量が高かった。またほかの都市に先駆けて消費者を巻き込み、会場にできた長い行列がニュースとしてメディアにも取り上げられた。それからインターネットやSNSの普及で価値観が変わり、昨今は生活様式も大きく変化している。これはもう元に戻るものではない。時代を映す鏡であるデザイナーもそれらを感じないとクリエイションで強いメッセージは届けられないだろうし、われわれも時代に合わせて進化していきたい。
WWD:東コレは今後どういった方向性に進むべき?
古茂田:ブランドをいかに認知してもらうかどうかを考え、全く新しいファッション・ウイークを組み立てていく必要がある。今、ファッションは服だけで表現するものではない。東京の強みである音楽やアートを絡めたイベントをさらに強化したり、サステナビリティに関する施策を次回以降は検討したりしている。ライフスタイルを提案するブランドもどんどん巻き込んでいくつもりだ。実は今回のキービジュアルでもモデルの中にバーチャルモデルを混ぜる試みに挑戦している。
2021年には目に見える結果を
WWD:来年に向けての計画は?
古茂田:次回3月は計画通りに進めて、その次は従来の10月から8月開催に切り替えるため場所も含めて未定だ。ホップステップジャンプという言葉があるが、今回はいろいろ挑戦したホップで、次が改善点を実績にするステップ。そして8月は集大成のジャンプとして、目に見える結果を残したい。
WWD:海外で発表していた日本のブランドが東コレに参加する予定は?
古茂田:現段階では未定だが、いくつか話はきている。お互いにとってチャンスなのであれば、発表できる準備を積極的に進めていきたい。そういったブランドが参加できるように、東京だけではなく世界の各都市がしっかり連携して考えていくべきだ。時代は変わっているのだから、もしかするとファッション・ウイークではなくファッション・マンスぐらいの考えがあってもいいのかもしれない。
WWD:自身のキャリアを現職にどう生かしていきたい?
古茂田:東レ時代からデザイナーズブランドに通い詰めて素材を提案し続けてきた。デザイナーを納得させるためには、同じ熱量や感度が必要だった。出る杭は打たれまくってきたけれど、その分ブランドへの思いは強いし、新しい文化を一緒に作っていきたい気持ちもある。それとサプライチェーンを構築し、いかに消費者に届けるかということを考えてきた。ショーに関わる仕事でも同じ。新しいことをやりたいという信念は常に持ち続けているので、「RFWT」でもその姿勢は持ち続けたい。