ジュエリーからスタートした「トム ウッド(TOM WOOD)」は2021年春夏シーズン、ヘッドデザイナーにマティア・ヴァン・セヴェレン(Mattia Van Severen. 以下、マティア)を起用し、テーラードを主軸とするウエアのコレクション「テン・バイ・トム ウッド」をスタートする。マティアはベルギー・アントワープの王立芸術アカデミーで修士課程を修了後、「ハイダー アッカーマン(HAIDER ACKERMANN)や「アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)」で経験を積み、現在はノルウェーのオスロを拠点に活動。今後も北欧でメンズとウィメンズそれぞれ10型のアイテムで構成するウエアを手がける。
デッドストックのイタリアンウールや、オーガニック認証を取得したコットンを用い、性別や年齢を問わずに楽しめるサステナブル&ジェンダーレスなテーラードやデニム、スエット、Tシャツなどを揃えた。コレクションへの思いをマティア、そしてブランドを立ち上げたモナ・ヤンセン(Mona Jensen)クリエイティブ・ディレクターに聞いた。
WWD:「テン・バイ・トム ウッド」でウエアのコレクションを拡充する理由は?
モナ・ヤンセン「トム ウッド」創業者兼クリエイティブ・ディレクター(以下、モナ創業者):アイデア自体は、私の“スケッチブック”の中にずっと存在したんです。ブランドとして、クラシックゆえに力強く、トレンドに流されない洋服を提案したいという思いがありました。そんな中でマティアに出会い、「ワードローブは、“ステイプル(重要)”なアイテムだけで十分。シルエットやディテール、サステナブルな作り方で一着一着にこだわるという方向性で共鳴したんです。
WWD:「テン・バイ・トム ウッド」というくらいだから、本当にメンズとウィメンズで10型ずつしか提案しない?
モナ創業者:色のオプションはあるけれど、本当に10型ずつです(笑)。「テン・バイ・トム ウッド」は、私たちのDNAになるでしょう。提案するのは、ライフスタイルに基づく構築的なテーラード。これまでのウエアよりちょっぴり大人っぽいと思います。私たちは「トム ウッド」をデザイナーズブランドに育てないワケではなく、トレンディな洋服を着る人だけに捧げるつもりもありません。
WWD:提案できる洋服は、毎シーズン全部で20型。普通のブランドに比べるとずっと少ない。デザイナーとして、表現が制限される不安はなかった?
マティア・ヴァン・セヴェレン「トム ウッド」ヘッドデザイナー(以下、マティア・ヘッドデザイナー):これまでのブランドでは1シーズンで30~40ルックを作るのが当たり前だった。男女10型ずつというのは、新しい挑戦だったよ。コンパクトにまとめる過程で、アイデアはよりコンセプチュアルに、イメージはさらにコンクリート(具体的)に進化したよ。提案を絞り込むのは、自然の流れだった。自分自身もワードローブを厳選するようになっているし、それぞれの洋服は好きなように楽しめるものばかり。仕事にも、レストランにも、パーティーにも使える汎用性の高い洋服だ。
モナ創業者:それが「トム ウッド」らしいと思ったの。だって「トム ウッド」のジュエリーは、いつでも、どこでも、誰でも楽しめるから。シーズンで10型は、とってもコンパクト。もしかしたらバイヤーは、欲しい洋服が見つけられないかもしれない。でも「トム ウッド」は創業時から、「そんな時もあるわ」と腹をくくっているの。ジュエリーのデザインも大きく変わらず、創業当初は「マスキュリンで好きじゃない」と評するメディアもあった。7年でバリエーションは増えたけれど、本質は変わらないわ。
マティア・ヘッドデザイナー:良い素材を使ってボリュームなどを変えていけば、アイコニックな洋服は常にモダンになる。ブレザーが、クールになる。今はナチュラルな思考を大事に、自分たちらしく、「テン・バイ・トム ウッド」を育てたいんだ。
WWD:世界が分断されている今、新しいプロジェクトを始めるのは大変だったと思う。
マティア:ニットファクトリーなどはあるけれど、ノルウェーのアパレルの生産背景は限られている。特に素材調達は大変だった。これまでの環境が、どれだけ恵まれていたのか思い知ったよ(笑)。でも、パタンナーなど素晴らしい人材に巡り会い、こんな時でも完成に導くことができた。プライスは、これまでの洋服に比べると多少高い。でも、小さなブティックから大手まで、反応は総じてポジティブだよ。