※この記事は2020年8月26日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
「データから想像」に必要なのは「現場力」
プリントからデジタルメディアに軸足を移して、最大の変化は「データから想像するようになった」ことです。
「分析」ではなく、「想像」だと思っています。私たちメディアが読み解くデータは、PV、UU、SS、PV/SS、SS/UU、TET(Total Engagement Time. 全読者の該当記事の滞在時間の総和を指します)などですが、指標ごとに並べ替えたり、ABテストで比較したりは、正直苦手(笑)。それは、隣にいる頼もしきデジタル・マーケティング部に依存しています。「想像」とは例えば、ロイヤルユーザーの滞在時間が長い記事を見つけては、「この記事はなぜ、ロイヤルユーザーに刺さっているの?」からスタートし、「彼らは、どこからサイトに来たの?Facebook?Twitter?」「今は、彼らにとってどんな時間?」なんて想像を膨らませること。最終的には往々にして、ユーザーのライフスタイルに思いを馳せることになります。下のリンクにある通り、私の記事が働き方や組織論などに傾倒しがちなのは、まぁまぁ大きな集団と予想される特定のロイヤルユーザー(乱暴に言えば、業界人です)のニーズと期待されるネタの中から、同僚が応えきれていないリクエストに対応したものです。想像する業界人と私自身は大差ないので、正直、“打率”は結構良いんですよ(笑)。PVは「中の上」くらいかもしれませんが、TETは「上の中」くらいだと思っています(笑)。
こんな風に「記事そのもの」を考えることに加え、「記事を読んでくれそうなユーザー」を考え出したら、いろんなことがやりやすくなりました。「どんな記事がバズるか?」とは考えないようになっているので、他媒体を常時チェックして、バズっている記事をマネることはありません。自分らしくない記事を無理やり吐き出すこともありません。そして私の記事やメルマガはお気に召さない方もいるでしょうが(笑)、一方で興味を持ってくださる皆さんとのエンゲージメントは日に日に強くなっている実感があります。上述の“打率”も、よほどの新機軸以外は向上している実感もあります。「プロダクト・セントリック」から「カスタマー・セントリック」に移行できているのかなぁ?なんて考えるワケです。
こんな経験を重ねると、「データから想像すること」「カスタマー・セントリックに進化すること」には、現場力が必要だと痛感します。私の場合は、データと、実際のコミュニケーションを掛け合わせることで「データから想像」できるようになったからです。実際のコミュニケーションがなければ、私は「データから想像」なんてできなかったでしょう。「データを分析する」では、導き出される答えは、おそらく1つに収斂します。差別化ができません。一方で「データから想像」ができなければ、書く記事は「当たればラッキー」くらいの散弾銃になってしまい、費用対効果が良くありません。
そう考えると、個人においても組織においても、机上と現場の融合は不可避ですね。データ・ドリブンなチームと顧客ファーストのチーム、本部のEC担当とショップスタッフはイーブンな立場で交わらないと、「データから想像し、カスタマー・セントリックに移行する」は難しい気がします。
と同時にリアル店舗は減少しているけれど、そこでキャリアを築いてきたスタッフには、まだまだ輝ける場所がいっぱいあると思っています。データを、現場を知るスタッフが想像して戦略が導き出せたら、それは強そうな予感です。
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