フェンディ(FENDI)は13日、公式サイトに社会的責任とサステナビリティに特化したページを設けた。
同サイトは「サプライチェーン」「環境」「コミュニティー」の3つの軸で展開され、活動内容や達成率に関する情報を提供している。「サプライチェーン」のセクションでは、全体の流れの透明性促進に取り組みながら、労働環境や社会的基準を満たすよう努めていると発信。「環境」では、フェンディが使用する素材に関する情報や調達源を提供しており、製品をめぐるコンプライアンスも掲載。また、資源を循環利用し廃棄物を出さないサーキュラーエコノミーの取り組みについてのページも設けている。ブランドと企業と関わりを持つ人々に焦点を当てた「コミュニティー」では、職人や従業員、クライアント、サプライヤー、そして地元社会に貢献する取り組みを紹介。若いデザイナーを支援するプログラムなども掲載している。フェンディのセルジュ・ブランシュウィッグ(Serge Brunschwig)会長兼CEOは「サステナビリティの分野では透明性がますます重要になっている」と述べた。
フェンディの親会社であるLVMHモエ ヘネシー ルイ ヴィトン(LVMH MOE HENESSY LOUISE VUITTON)では、ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)会長兼最高経営責任者(CEO)が1992年にサステナビリティに関する部署を設立している。アントワン・アルノー(Antoine Arnault)=ヘッド・オブ・コミュニケーション&イメージは、「LVMHグループのすべてのマネジャーや経営陣は、サステナビリティを優先リストの最上位に置いている。過去数年で考え方は変わり、プロジェクトの種類にかかわらず、常にステナビリティを考慮しており、エコデザインは最優先事項になりつつある。アイデアが生まれる瞬間から製品が廃棄されるまで、リサイクルや古いものから新しいものを生みだすこと、サステナビリティはわれわれのビジネス活動に根付いている。このテーマがまだ広く普及していない時から、長く取り組んできたことを誇りに思う」と述べた。
また「コミュニティーや従業員、クライアント、このトピックについて興味のある人などみんなと話すことが大切」とし、「われわれは自分たちが完璧ではないと理解している。ときには落ち度があることも認めた上で、透明性を通じて誠意を示している。正しい方向に進んでいないよう感じた場合は内外の人に注意してほしいとお願いしている。これは改善のために有効な方法だ」とコメント。
また、フェンディはフィレンツェ郊外のトスカーナに新工場を設立する。新工場は22年7月にオープン予定で、革製品の生産と発展を強化し、トレーニングセンターとしても活用するという。生産規模の拡大に伴い、すでに工場で働く150人の従業員に加えて、今後2、3年のうちに300〜350人を新たに雇用する予定だ。8万平方メートルの敷地に建てられ、ミラノを拠点とする建築スタジオのピウアーチ(PIUARCH)が設計を手掛けた。周囲と内壁の両方にガラスを使用し、中庭に地元の品種の植物や花を置くことで、フェンディは建築や都市の環境性能評価システムであるLEEDプラチナ認証取得を目指している。また、生物多様性へのアプローチで公園も併設した。
フェンディのシルヴィア・ヴェントゥリーニ・フェンディ(Silvia Venturini Fendi)=
クリエイティブ・ディレクターは、「素晴らしいことで、とても幸せだ。このような厳しい状況にある中でも“メード・イン・イタリア”を核に成長を続けられている。工場は常に私たちの中心にあり、工場を訪れるといつも感情が揺さぶられる。この施設では人々が協調性を持って働くことができ、周囲の景観にも馴染むだろう」とコメントした。すでにあった古い建物を生かして建てられることから、「これ以上新たに建てる必要もない」と喜びを露わにした。
フェンディはほかにも、サステナブルなコットンの生産に取り組むBCI(Better Cotton Initiative)認証のコットンの使用など天然素材の採用を強化し、最終的に完全にオーガニックコットンの使用を目指す。ライニングや包装にセルロースベースの繊維を使用するとともに、2020年春夏コレクションではレザーデザインの進化系である“FFグリーン インターレース”カプセルコレクションを発売した。ハンドバッグの“ピーカブー”や“バケット”は、認定されたFFコットンと、リサイクルポリエステルを混合して作られる。
サステナビリティを通じた地元コミュニティーの支援にも力を入れており、10月にはイタリアの職人を称えるためのパートナーシッププロジェクト「ハンド・イン・ハンド(Hand in hand)」を発足した。21年春夏コレクションで初めてのデザインを公開。さらにパンデミックによって事業に大きな打撃を受けたイタリアのガラス会社を買収し、37のシャンデリアを分解してローマや上海、パリ、ロンドン、ニューヨークなど世界各地の店頭のクリスマスディスプレイの装飾に再利用する。
一方フェンディのブランドの核ともいえる毛皮製品は、近年環境問題と動物愛護の観点からその存在が見つめ直されつつある。人工ファーを用いたファッションは関心を集めており、ファッションブランドも動物を原料とする毛皮の使用を避ける傾向にあるが、ブランシュウィッグ会長兼CEOは、「フェンディにとって毛皮は間違いなくサステナブルな素材だ」という。
アントワン=ヘッド・オブ・コミュニケーション&イメージは、「このようなセンシティブな話題について真実を伝えることは非常に重要だ。確かな認証に準拠するためにできることはすべて行うが、ナイーブであってもいけない。私たちが毛皮の生産をやめたとしても、人々が毛皮を買うのをやめるわけではない。正しい方法で作られた毛皮をそういったクライアントに売りたいと思っている。確かに動物は命を落としているが、敬意を示して扱っている。劣悪な環境で動物を扱う業者による毛皮が取り引きされるより、むしろ私が悪者になり、正しい方法で販売したいと思っている。聞き入れがたい意見であることも理解しているが、良い反応も悪い反応もすべて受け止める責任は持っている」と語った。