ファッション

文化の盗用問題でイザベル・マランが謝罪

 「イザベル マラン エトワール(ISABEL MARANT ETOILE)」2020-21年秋冬コレクションの一部のアイテムにメキシコの先住民特有の模様を使用したことなどが“文化の盗用”だとメキシコのアレハンドラ・フラウスト・ゲレロ(Alejandra Frausto Guerrero)文化相に非難された件について、デザイナーのイザベル・マランが謝罪した。

 問題のアイテムは同コレクションに登場したケープで、メキシコの先住民プレペチャ(Purepecha)が用いるデザインや柄が使用されていたという。フラウスト文化相はマラン宛に書簡を送り、その中で「メキシコの先住民の文化やアイデンティティを構成する要素」が使われたと非難した。「あなた(イザベル・マラン)が採用した一部のシンボルについては、この世界のどの言語とも関連をもたない言語で、この文化にとって重要な意味を持つものも含まれている」として、「どのような理由で共有財産を私物化するのか、その利用がどうクリエイティブなコミュニティーのためになるのか、公に説明することをイザベル・マラン氏に求める」とつづった。

 これに対してデザイナーのマランは、「工芸の促進と、工芸が持つ美学への敬意を表することが目的だった」と説明し、自身のデザインに対するアプローチが文化の盗用だとみなされたことについて非常に残念だと返答した。また、「イザベル マラン」は常に「世界に開かれ、外国の文化や伝統を志向してきた。この理由から、文化的なミックスに焦点をあて、ドレスコードを再解釈してきた」と使用した意図を説明した。そのうえで、「もしメゾン イザベル マランおよびそのクリエイターたちがプレペチャのコミュニティーとメキシコを軽視したとしたら、心からお詫び申し上げます」と謝罪し、「今後は、双方の利益を両立させ、伝統的な文化表現の所有者への感謝を表すことでインスピレーション源に敬意を表する」と続けた。謝罪文にはマランとアヌーク・デュラントー・ロペ―ル(Anouck Duranteau-Loeper)=ブランド最高経営責任者が連名で署名した。

 マランの謝罪をツイッターで公表したフラウスト文化相は「コミュニティーがいかなる利益よりも優先されるべきだ。われわれは国際的なデザイナーが先住民の文化遺産の価値と多様性を認識し、それを守るためのアライ(協力者)になってもらえるよう努めていく」とコメントした。

YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中

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