ファッション

身近なゴミが服に!? 廃棄物から生まれたファッションアイテム【今知りたいサステナビリティQ&A】

 「サステナビリティなしに未来はない」といわれているが、具体的な問題や取り組みについてはまだまだ知らないことは多い。「今知りたいサステナビリティQ&A」は、SNSで読者に募った「サステナビリティに関する気になるトピックス」に対して、「WWDジャパン」の先輩&若手記者の対談と過去記事を引用して回答していくインタラクティブな新連載だ。第1回目は、廃棄物から生まれたファッションアイテムを取り上げる。

※サステナビリティに関する質問や疑問は随時募集中。こちらからお送りください。

【対談参加者】
廣田悠子:サステナビリティ担当記者
皆合友紀子:ファッション担当記者

皆合友紀子(以下、皆合):読者が気になるサステナビリティのトピックスについて話し合う連載が始まりました!インスタグラムの読者アンケートで最も関心が高かったのが、廃棄問題や循環型ファッションでした。今はゴミからいろいろなものが作られていますよね。最近だと、9月に発売されたリサイクルナイロン「エコニール(ECONYL)」を使った「プラダ(PRADA)」のリナイロン(Re-Nylon)コレクションがかわいかった!

廣田悠子(以下、廣田):ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とラフ・シモンズ(Raf Simons)による「プラダ」2021年春夏コレクションでも「エコニール」を使ったアイテムがあったよね。サーキュラースカートが欲しい!

皆合:「プラダ」は21年までに全てのナイロンを「エコニール」に切り替えると発表していますよね。ナイロン製品が主力の一つである「プラダ」の決断に、環境への意識の高まりを感じました。廣田さんも取材していましたが、「プラダ」をはじめ「グッチ(GUCCI)」や「バーバリー(BURBERRY)」「H&M」などサステナビリティ推進企業が注目する「エコニール」のすごさって何ですか?

廣田:不純物が混ざった廃棄物から作られているところ。これまでのリサイクルナイロンは、製造工程で出た歯切れなど不純物が比較的混じっていないものから作られていたの。でも回収されたゴミから作るにはさらに高い技術が必要とされる。しかも「エコニール」は製造工程もクリーンで危険な化学物質を使っていない。「危険な化学物質を使わずに作る」「新たな資源を使わずに作る」というテキスタイル業界が抱える課題を実現したといえるんじゃないかな。

皆合:「エコニール」は50%が漁網と使い古したカーペットなどの廃棄物から作られているんですよね。漁網は海洋汚染としても問題視されています。

廣田:「科学者は、年間65万以上の海洋生物が漁網に捕らえられて命を奪われるか、怪我をしていて、生態に重大な悪影響を及ぼしていると推定している」と「パタゴニア(PATAGONIA)」の方が教えてくれましたが改めて「海はゴミ箱じゃないんです!」と言いたいね。

皆合:本当ですね。他に気になるのが食糧廃棄物のリサイクル。過去にパイナップルの葉の繊維やオレンジの皮から作られたスニーカーや服が「H&M」や「シャネル(CHANEL)」「ボス(BOSS)」から商品化されて話題になっていましたよね。もはやゴミは資源になりうるのだなと。

廣田:“パイナップルレザー”を作るロンドンのスタートアップ企業の創業者は、もともとラグジュアリーブランド向けの革製ハンドバッグのデザインやコンサルをしていた方。サプライチェーンの理解のために原料を調達していた南米やフィリピンを訪れたときに、現場の劣悪な環境にショックを受けたそう。「レザーはサステナブルではない。こんな生産方法でいいのか」と自問して大学へ入り直し、一からテキスタイルを学びなんと博士号まで取って、パイナップルの葉から作るレザー風のテキスタイルを開発。パイナップルの葉は硬くて土に埋めても分解に時間がかかるらしいから、再利用するのはいい取り組みだよね。

皆合:他に気になっている食糧廃棄物からのリサイクルはありますか?

廣田:ブドウの搾りかすの皮を原料にしたビーガンレザーかな。ワイン、そしてグラッパのために使われたへとへとなブドウの搾りかすだから、とても有効活用しているよね。12月1日発売の「H&M」コンシャス・エクスクルーシブ・コレクションのブーツにも使用されていましたよ。

「グッチ」「プラダ」も採用するリサイクルナイロン 創業者に開発秘話を直撃

■イタリアのアクアフィルが開発
■原料は使い古しの漁網やカーペット
■「『エコニール』はマジカルな商品」
>>>この記事の続きを読む

「プラダ」の“リナイロン”コレクションから新作発売 再生ナイロンを使用したアパレルからシューズまで

■ラインアップを拡張
■ロゴでタイムレスを表現
■青山店でインスタレーションも
>>>この記事の続きを読む

「シャネル」も注目する“パイナップルから作るレザー”、ロンドンのスタートアップ創業者が語るその意義

■開発者はレザーグッズのデザイナーから転身
■開発に10年
■「日々の選択を全力で行って」
>>>この記事の続きを読む

ヒューゴ ボスがパイナップル由来の人工レザースニーカーを発売

■パイナップルの葉からレザーに似た不織布ができる
■染色も植物を用いる
■ソールはリサイクルTPU
>>>この記事の続きを読む

ブドウの搾りかすから人工皮革 「ベントレー」が注目する伊ベンチャー

■建築家と化学者が設立
■英国の高級車「ベントレー」とコラボ
■2019年9月から量産へ
>>>この記事の続きを読む

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2025年春夏ウィメンズリアルトレンド特集 もっと軽やかに、華やかに【WWDJAPAN BEAUTY付録:2024年下半期ベストコスメ発表】

百貨店、ファッションビルブランド、セレクトショップの2025年春夏の打ち出しが出そろった。ここ数年はベーシック回帰の流れが強かった国内リアルクローズ市場は、海外ランウエイを席巻した「ボーホー×ロマンチック」なムードに呼応し、今季は一気に華やかさを取り戻しそうな気配です。ただ、例年ますます厳しさを増す夏の暑さの中で、商品企画やMDの見直しも急務となっています。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。