フランスのライフスタイルブランド「メゾン キツネ(MAISON KITSUNE)」は、繊維商社の豊島が手掛けるトレーサブルオーガニックコットン糸〝トゥルーコットン(TRUECOTTON)“から始動した環境保全のチャリティプロジェクト「セーブ・ネイチャー&アニマル・プロジェクト(Save nature and the animals project)」に賛同し、〝トゥルーコットン”を使用したエコバッグとTシャツを限定販売する。
〝トゥルーコットン“は生産農場と紡績工場を特定できるオーガニックコットン糸で、その代表格であるトルコオーガニックの紡績グループのウチャクテクスティル(UCAK TEKSTIL)社と豊島が日系企業向けの独占販売契約を締結した。
「セーブ・ネイチャー&アニマル・プロジェクト」の売り上げの一部は、豊島と昨年パートナーシップを結んだ環境保全団体のWWFジャパン(世界自然保護基金ジャパン)に寄付され、希少な野生生物と森や海を守る活動や、自然資源の持続可能な利用と地球温暖化の防止を目指した活動の支援に使用される。
エコバッグとTシャツのデザインは、「WWF」と書かれたキャップを被るキツネのモチーフが特徴。コンパクトなエコバッグは持ち運びが便利で、付属のボタンは環境に配慮した廃棄魚網のリサイクル素材を使用している。また、Tシャツは心地よい肌触りのトゥルーコットン糸で編んだ生地を「メゾン キツネ」定番の型に仕上げた。エコバッグは12月24日に「メゾン キツネ」の東京・青山店、代官山店、大阪店、京都・新風館店、「カフェ キツネ」青山店とWWFの通販サイト「PANDA SHOP」で発売予定で、価格は3000円。Tシャツは来年1月発売予定で、価格および販売店舗は未定。
同プロジェクトが実現した経緯について、「メゾン キツネ」の黒木理也ファウンダー、豊島の田中哲平氏、WWFジャパンの金子幸史・淡水グループジャパン テキスタイル リードに話を聞いた。
WWD:「セーブ・ネイチャー&アニマル・プロジェクト」に賛同した理由は?
黒木理也「メゾン キツネ」ファウンダー(以下、黒木):以前からサステナビリティについて大切に考えていたが、余力がなくてなかなか形にできなかった。今回、豊島とWWFジャパンとの協業できちんと取り組めたことをうれしく思う。何か始めないとリアクションがないし、進化しない。
WWD:エコバッグとTシャツに込めた思いは?
黒木:環境保全に対して率直な気持ちを伝えるメッセージだ。新しいスタートをイメージして、色を付けずにシンプルで気軽に使用できるデザインにした。ジェンダーレスでエイジレスなベーシックさは、誰でも愛用することができる。難解な問題なので、特に若者は理解しずらい点があるかもしれないが、このTシャツを着て遊びに出掛けたり、エコバッグを持ってコンビニに買い物に行くことがサステナブルな行動につながる。普段の生活の中で、自分なりにできることは何か。多くの人が環境問題について考えるきっかけになればいい。
田中哲平・豊島二部一課(以下、田中):豊島はオーガニックコットン普及プロジェクト「オーガビッツ(ORGABITS)」や、廃棄食料を再活用する「フードテキスタイル(FOOD TEXTILE)」など30年以上、サステナブルな活動に積極的に取り組んでいる。“トゥルーコットン”の使命は、多くの人にサステナビリティに興味を持ってもらい、環境保全や自然保護につながるちょっとしたいいことを広めていくこと。当社だけの発信では限りがあるが、「メゾン キツネ」とWWFジャパンとの協業は大きな効果を生むと思う。
WWD:WWFの資料によると、繊維産業は石油産業に次いで水の汚染が2番目に大きく、水の使用量が2番目に多い。
金子幸史WWFジャパン淡水グループジャパン テキスタイル リード(以下、金子):服飾・繊維関連分野をサステナブルに変えていくプロジェクトは、WWFの優先活動の1つ。WWFジャパンがパートナーとする初めての日系ファッション企業である豊島と、世界的に影響力のある「メゾン キツネ」との取り組みにより、多くの消費者のリアクションを期待している。
WWD:サステナビリティを重要視するきっかけとなったのは?
黒木:約5年前、ヨーロッパから東京に生活の拠点を移したとき。みんながエコバッグを持つなど環境保護の意識が高いヨーロッパと比較して、日本やアジアの街中であまりのゴミの多さを見て悲しい気持ちになって火が付いた。
WWD:今後、サステナビリティに対してどんな取り組みを進める?
黒木: バリ島に100%サステナブルなヴィラを来年開業する予定だ。他に自然や環境に配慮したリゾート開発も進んでる。(「メゾン キツネ」共同創業者の)ジルダ(・ロアエック/Gildas Loaec)ほどではないが、バリ島は好きだ。日本にサステナブルな旅館があっても面白いと思う。アイデアはたくさんあるので、慎重に考えていろいろと続けてみたい。行動力があり、創造力豊かな日本人は、さまざまなことができると思う。例えば、若者の理解をもっと深めるために、学校の授業にサステナビリティの課題に取り組むコンテンツを取り入れても良いのではないか。
金子:産学連携のサステナビリティの教育は面白いかもしれない。若者の将来が過酷なものにならないように、さまざまな立場の皆さんとの対話を通じて連携を深めながら、環境に高い負荷をかけている繊維産業の課題を克服していきたい。“トゥルーコットン”は、繊維企業の事業をサステナブルに変えていく大きなきっかけになると思う。
田中:これまで、勢いのある取り組みがまだ足りないと感じていた。今回のプロジェクトは、多くの人に強いメッセージとなるに違いない。今後も他社の力を借りながら、日本市場にサステナビリティを落とし込んでいきたい。