※この記事は2020年10月20日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
珍しくメディアの前に登場した川久保さんはきれいでした
「コム デ ギャルソン」は19日、2021年春夏コレクションを南青山のオフィスで発表しました。ソーシャルディスタンシングを保ったショー形式で、客席は50ほどでしょうか。パリコレでのギャルソンのショーはいつも“ギュウギュウ”でその密度の濃さが期待値を高めてもいました(以前、私の隣ではデザイナーのシモーン・ロシャが、誰かの膝の上で見ていました)。だからフェイスカバーを身に着けてソーシャルディスタンシングを保って見る「コム デ ギャルソン」はある意味新鮮で貴重な体験でした。
ショーが終わって鳴りやまない拍手の中でもデザイナーの川久保玲さんが姿を見せないのはいつものこと。でもその後がいつもとは違いました。来場者がバックステージへ挨拶に向かおうとすると川久保さんの方から姿を見せ、自然と囲み取材になりました。そして穏やかに、質問に対して丁寧に答えました。
>ショーの内容やコメントは大杉記者の渾身リポートに譲ります。
話を聞きながら私が目を引かれたのは、川久保さんの肌でした。“おい貴重なインタビューの場面で何見てるんだよ!”と突っ込んでいただいて構いません(笑)。もちろんちゃんと話を聞きながらですが、パッツリ切った前髪とマスクの間からのぞく繊細なまつげがしっかり上がり、目の下に入れた(多分)赤色のアイラインとコントラストが効いていて、肌がきめ細やかだったことを私は見逃しませんでした。着ている服がライダースではなく黒のテーラードジャケットとバルーンスカートだったことや、話す口調が穏やかなことも関係しているかもしれませんが、とても優しく女性らしい印象を受けたのです。
パリでの川久保さんは率直に言えばもっと近寄りがたく、時々街角を速足で歩く姿を見かけても気軽に声をかけることはできませんでした。そんな強い川久保さんと今日の川久保さんには小さなギャップがあり、私は優しい川久保さんがすごく好きでした。地元東京だから見せた表情なのだとしたらラッキーです。
私の中に「“今”であり続けるファッションデザイナーは肌が若々しい」という説(?)があります。ブランドが「過去のもの」とならず“今”であり続けるには、デザイナー自身が自分もアップデートし続けることが不可欠だと思うからです。「もういいや、こんなもんでしょ」と投げだしたら終わり。ちなみにこれってお金や技術の話ではありません。もちろん永遠の若さを手に入れよう、という話でもありません。自分自身に関心を持ち、自分をケアし続けることで得られるその時々の健やかな美、という意味です。だから肌がきれいな川久保さんが手掛ける「コム デ ギャルソン」は改めて強し、と思ったのです。
だからなんだ、というオチがある話ではありません。コロナにより強引に環境が変わったことで見えたひとつのできごととして受け取っていただければ幸いです。そして私も肌の手入れをもっとちゃんとしようっと、と思ったのでした。
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